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第5話 『サイダーの亡霊』
しおりを挟む「『会えるから』」
俺にとっては当然のものとなって久しい答えを口にする。
「は?」
「会えるんだ。サイダー飲んだら口の中がしゅわしゅわするだろ。その余韻が残ってる間だけ、俺はあいつに――――來夢に会えるんだ……」
今朝も見送ってくれた柔らかな笑顔を思い出し、頬と一緒に涙腺まで緩んできた。
「何、会えるって…………会え? え? ……と、とりあえず詳しく……!」
「俺が勝手に幻覚見てるだけだってのはわかってるんだけどさ。いるんだよ。サイダー飲んでるとき、あいつが目の前にいる。声も聞こえる――……てか、会話出来る」
「はぁ!? オマ……、薬物キメてるわけじゃねーよな?」
「これが薬物に見えるか? 試してみりゃいーじゃん。……ただのサイダーだろ、待田にとっては。思い出も思い入れもない。第一、知り合いでもねぇんだし、どうせなんも起きねぇよ」
開栓前のボトルを左右に振り、待田にパスした。亡霊に出会う前に中身が噴き出してきそうだ。炭酸持ってると無性に振りたくなるときがあるなんて、あの頃の俺は知らなかったよ。
「いや、万が一ってことも…………」
「サイダーはお嫌いか?」
あの日の來夢とそっくり同じ台詞を投げかけた。オマージュしたところで伝わるはずないのに。
「いや、わりと好きだけど。オマエって話の途中でちょいちょい別人になるよな…………」
待田はドン引きしていたが、受け取ったサイダーをすでに開栓していたし、なんなら口を付ける直前だった。少し振りが甘かったか。
「ああ。來夢の真似っ子。……一種の降霊術みたいなもんかもな。それ考えると」
思ったことを口に出したら、待田は口に含んだサイダーを噴き出してしまった。
「『サイダーの亡霊』ってとこか?」
「サイダーの……亡霊…………」
タオルも使わず腕で口元を拭った待田の言葉が、來夢を失ってぽっかり空いていた穴に染み込んでいく。
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