「突然、幼馴染が『これから女の子として生きる』って言い出したんだけど、俺、どう反応すればいいんだよ！？

第32話：「未来のために、今選ぶべきこと」

　誠と奏がいつものように教室に戻った。
　昨日までの不安も少しずつ消えて、互いに支え合っている安心感が漂う。

「誠、今日、少し話したいことがあるんだ。」

　奏が、放課後の教室で声をかけてきた。
　その言葉に、誠は少し驚いたが、すぐに答える。

「うん、何？」

　奏は少し沈んだ顔をし、少しの間黙っていた。

「私、最近、ちょっと考えてることがあるんだ。」

「考えてること？」

「うん。これから先、私が“斎藤奏”として生きていくのは決めた。でも、その先に進むためには、もう少し自分を深く知っていかないといけないって思ってる。」

　誠はその言葉をじっくりと受け止め、目の前の奏を真剣に見つめた。

「それって、どういう意味？」

「これから先、自分の人生をどう進めていくのか、それをもっと考えたくて。今まで、誠と一緒にいることで気づけたことがたくさんあったから、次は自分自身をもっと大切にしていきたい。」

　その言葉を聞いた誠は、しばらく黙っていた。
　でも、彼はそれを尊重し、静かに頷いた。

「分かった。君が決めた道を、俺は応援するよ。」

「誠……ありがとう。」

　その夜、誠の決意
　夜、誠は自分の部屋で静かに考えていた。
　奏が言った言葉が、心の中で何度も反復されていく。

「自分をもっと深く知っていく。」

　誠は、ふと気づいた。

　自分の気持ちも、ちゃんと確かめないといけない。
　今まで、誠は奏に対して「好き」と言う気持ちを隠していたわけではないけれど、やはりその気持ちを言葉にするのは少し怖かった。

　でも、もうそれを躊躇している場合ではない。

「未来を一緒に歩むためには、今の気持ちを言わなきゃならない。」

　誠は心の中で決意を固め、その後、スマホを手に取った。

【誠：奏、私、今、君が本当に好きだって気づいた。】
【奏：……誠、それ、嬉しい。私も、誠のことをずっと好きだった。】

　その日の翌日、教室でのひととき
　朝、誠が教室に入ると、周囲の視線がわずかに気になった。
　でも、奏が誠を見て微笑んだだけで、その不安がどこかに消えていった。

「おはよう、誠。」

「おはよう。」

　ふたりは、ただ普通に言葉を交わす。
　でも、そこには確かな安心感があった。

「今日、帰りに少しだけ寄り道してもいい？」

「もちろん。」

　誠は、自然と奏の手を取った。

「これからもずっと、君と一緒にいたい。」

　奏は、その言葉を受け止め、しっかりと手を握り返した。

「私も、誠と一緒にいたい。」

　ふたりは、歩きながら心の中で感じていたことを、言葉にはしなくても共有していた。

　夜、誠の決断
　その夜、誠は再び自分の部屋で静かに考えた。

「未来を一緒に歩むためには、今の気持ちをちゃんと言わなきゃ。」

　その気持ちをしっかり言葉にした誠は、確信を持った。

　奏の言葉、そして自分の気持ち――
　ふたりの歩むべき道は、これからも共にある。
　どんな困難が待ち受けていようとも、誠は決して後悔しないと心に誓った。