同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第七十七話 交わる世界、君と紡ぐ物語

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日曜日の昼下がり。

 ストーブの前、こたつに脚を突っ込みながら、俺と碧純は一緒にラップトップを覗き込んでいた。

「うわ……このキャラ、ヒロインなの? めっちゃ性格悪そう……」

「そこがいいんだよ。ギャップと成長の余地が“燃え”なんだって」

「ふーん……“萌え”じゃなくて“燃え”なの?」

 彼女の言葉は興味半分、茶化し半分。
 でも、確実に一歩、俺の世界に入ってきてくれていた。

 きっかけは昨日。
 オタク部屋バレ事件(※第76話参照)により、俺の趣味はすべて白日の下に晒された。
 そしてなぜか今日、碧純は自ら「ラノベを書いてみたい」と言い出した。

「じゃあ、まずキャラ設定からだな」

「うん。ヒロインの名前は、えーと……“あおすみ”とかどう?」

「いや、実名はやめとけ」

 俺は笑いながらも、少しだけ胸が熱くなった。
 彼女が“俺の趣味”を共有しようとしてくれていることが、なにより嬉しかった。

「で、性格は?」

「口が悪くて、ブラコンで、料理はうまいけど家ではすぐパンツ一丁になる」

「いやそれ、お前じゃん」

「バレた?」

 こたつの下で、碧純の足がぴとっと俺のふくらはぎにくっついた。
 ちょっと冷たくて、でも心地よかった。

 午後。

 原稿ソフトを開いて、俺は彼女のプロットを清書しながら、ふと思った。

「なあ、碧純」

「なに?」

「こうやって一緒に話したり、作ったりしてるとさ、なんか、ずっと前からこうだった気がする」

「……前からって?」

「たとえば、俺たちがずっと普通の兄妹じゃなくて、最初から“恋人”だったら——みたいな」

 その言葉に、碧純は少しだけ考えて。

「……それはね、なんか違う気がする」

「……?」

「だって、兄妹だったからこそ、“特別”になれたんだよ。普通の恋人だったら、ここまで気持ちが絡まってなかったと思う」

 彼女の言葉は、あまりに的確で、俺は一瞬何も言えなかった。

 そのあと、彼女はそっと手を重ねてきた。

「私は、普通じゃないこの関係が好きなんだ。
 ちょっと面倒で、ちょっとズレてて、でも……誰よりも深いの」

 俺も、同じ気持ちだった。

 夕暮れ前。

 ふたりで出かけたコンビニ帰り、碧純がふと空を見上げた。

「……あ、雪。ほら、また降ってきた」

 白い結晶が、頬に落ちる。
 何かを思い出すように、彼女は呟いた。

「ねえ。お兄ちゃん。
 “わたしたちの物語”、誰が書いてると思う?」

「……誰、だろうな」

「私はね、こう思うの。……“二人で書いてる”って」

 その言葉に、俺は心の中でペンを握った。

 彼女となら、どんな物語でも描ける。
 それが、きっとこの“恋”の一番の意味だ。

(つづく)

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