同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第八十六話 夢精事件、ヒロインたちの追及タイム!

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俺が全方位土下座状態で迎えた元日の朝。

 あのあと、布団の中でどうにか隠そうと奮闘していたものの、運命は非情だった。
 ヒロインたちは、順番に寝ぼけた顔でリビングに現れ、そのたびに「あれ……なんか匂いしない?」「ねえ、布団の形……?」と勘のいい女の勘が働き始める。

 その中でも特に反応が鋭かったのは、やっぱり碧純だった。

「お兄ちゃん……夢、見てたんだよね?」

「え!? いや、それは……そうだけど……っ」

「……内容、詳しく教えてもらおうかな?」

 彼女の声が低くなった瞬間、他のヒロインたちの表情もピリつく。

「えー!? 夢の内容ってなになに!? すっごい気になる!」

「ふふ……この場にいた誰かが出てきた、ってことですよね?」

「待って、私、ちょっとだけ記憶にあるような……夢の中で私、何かしてた!? なにしてた!?」

「その“何か”によっては観察記録が更新されるわね」

「待て! みんな落ち着け! これは不可抗力というか、なんというか……!」

 俺は頭を抱えた。
 夢精、という男子にとっての“最大の無防備”が、なぜこんなにガチ恋勢に包囲された状態でバレてしまったのか。

「じゃあ、確認しようか。順に、自分が夢に出たか確認していく?」

「はいはいはい! 私、出た気がする! なんかこう……布団の中であったかくて!」

「私はきっと、真壁くんの右肩に抱きついていた……あれは夢じゃなく現実だったかも?」

「私は首筋にキスした覚えがあるわね……夢じゃなかったら私、ちょっと怒るけど」

「ルナちゃんは確信犯でしょ……」

「うぅ……ごめん、お兄ちゃん。私があんな格好で寝たせいで……」

「いや、それは関係ない! というか全部俺の責任だから謝るなっ!」

 俺は叫びながら、再び頭を深く下げた。

 でも、そのあと——

「……ふふっ」

 誰かが笑い出した。
 そして次々に、くすくすと笑い声が部屋に広がっていった。

「いやー、夢精ってホントにあるんだねー」

「男の子って大変だなぁ」

「これが新年初めての“性教育”ってやつ……?」

「これはこれで、“青春”って感じですわね」

 最終的にみんなで爆笑する流れになり、俺は枕を顔に押し当てながらうめいた。

(……来年こそは平穏な正月を……)

 その願いは、正月二日目にしてすでに泡と消えたのだった。

(つづく)

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