同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第一一九話 供出の果てに──下着会議、開幕

昼休み。教室。

　俺の机の上には、パンツが一枚——否、すでに三枚目だった。

「お兄ちゃんの机が……女子更衣室になってる……」

　碧純が青ざめた顔で呟いた。

「供出文化、加速してるわね。まるで戦国の献上品」（すみれ）

「観察記録：下着流通速度、前代未聞の加速度」（ひより）

「じゃあ、わたしの分も～♪ 弘弥くんの引き出し、空いてるよね♡」（瑠衣）

　ドンッ、と机に並ぶ、計四枚。
　素材、香り、リボン、フリル、すべてが違う。
　まるで“愛”と“個性”の見本市だった。

　そして。

「……そろそろ決めるべきでは？」

　最も冷静な観察者——ひよりが提案した。

「“供出順位”を明確に。
　第一供出者の名誉と、対象への影響力を記録すべきです」

「名誉って何！？ それ誇ることなの！？」（弘弥）

「ふふ……もちろん、最初に手渡した私よね？」（ひより）

「は？ それなら、瑠衣ちゃんのが先だったって話もあったじゃない！」（碧純）

「いやいや、すみれさんも一度匂わせてましたよね？」（瑠衣）

「……わたしは、そっと渡しただけだから……表立ってはないけれど……」（すみれ）

「儀式布は我が手から始まるはずだった。だが、“現界”の順番など……」（ユナ）

「ユナはまだ渡してないでしょ！！？」（全員）

　大混乱。

　そして、その中心で、俺は——泣きそうだった。

「お願いだから……普通の昼休みに戻してくれ……」

　その声に、全員が一瞬沈黙した。

　だが。

「“供出順”で揉めるなら——本人が決めれば？」

　言い出したのは、まさかの碧純。

「えっ……」

「お兄ちゃん自身が、一番“心が動いた”パンツを選べばいい」

「な、なんの地獄！？！？！」

「それが、最初に彼の心に届いた、供出一位の証明……ということで」（ひより）

「面白そうじゃん、それ♡」（瑠衣）

「弘弥くん、いいのよ。素直に、選んで？」（すみれ）

「決まったか……我が布の出番は、まだだが……運命は、収束する」（ユナ）

　俺は、逃げた。

　全速力で、教室を飛び出した。

（つづく）