同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一二一話 イザベラ・アーデン、逆転の王手──貴族の誇りと乙女の策謀

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放課後。

 すみれとの一件が片付き、ようやく静けさが訪れた——かに思えた教室。

 だが、その空気を一変させる存在がいた。

「……なるほど。日本の“下着選抜会議”とは、ずいぶんと情熱的な儀式のようですね」

 声の主は、窓辺に立つ銀髪の美少女——イザベラ・アーデン。

 整った顔立ちとエレガントな佇まい。
 高貴なオーラを放ちながらも、瞳の奥には揺るぎない意志が燃えていた。

 俺は、思わず言葉を失った。

「イザベラ……? いつの間に……」

「わたくし、聞いてしまいましたの。
 弘弥様が“パンツで心を動かされた”というお話を」

 さすが王女。聞くに聞けない部分を、完全に把握している……!

「ふ、ふふっ……誤解だよ。あれはその、文学的な象徴であって——」

「では」

 イザベラは、懐から白いハンカチを取り出す。

 そして、その下から。

「こちら、わたくしの“紋章付き”でございます」

 差し出されたのは——
 サテン地に金の刺繍があしらわれた、明らかに高級すぎるレースパンツ。

「ま、待って待って!? 王族の方がそんなものを——!?」

「誇り高きアーデン家の姫として、正式な“恋の宣戦布告”です」

「なにその外交感覚!?!?!」

 動揺する俺をよそに、彼女は静かに続ける。

「わたくし、弘弥様の物語と勇気、そして日常の中の誠実さに心を打たれました。
 それゆえ、こうして正式に“供出”に参加させていただきます」

 完璧すぎる言葉選び。
 品格と羞恥のギリギリを攻めたその態度に、教室全体がざわめく。

 ヒロインたちが反応するのも無理はない。

「ちょ、ちょっと待って!? 外交レベルでのパンツ供出ってアリなの!?!」(碧純)

「観察記録:供出戦線、ついに国際化……!」(ひより)

「弘弥くん、それ受け取ったの!?!? お、お金持ちの香り……」(瑠衣)

「……布の価値に惑わされてはならぬ……!」(ユナ)

「ふふ……面白くなってきたわね」(すみれ)

 嵐は、まだ終わっていなかった。

 イザベラ・アーデン——高貴なる恋の刺客は、静かに机に腰かけると、
 俺の目をまっすぐ見て、優雅に微笑んだ。

「——では、次は“デート権利”を賭けた投票戦、などいかがです?」

 その提案が、次なる騒動の火種になるとは、まだ誰も知らなかった。

(つづく)
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