159 / 630
第一四四話 春の遠足──アクアワールド大洗の誘惑
しおりを挟む
春の陽射しが、制服の上からも心地よく感じられる朝。
俺たち2年B組は、茨城県が誇る巨大水族館——アクアワールド大洗へと向かっていた。
バスの中は、すでに修羅場の予感が満載だった。
「お兄ちゃん、席……ちゃんと隣だよね?」
出発前に碧純が確認してきたが、それを聞いていた瑠衣がニヤリと笑った。
「え~、じゃああたしはひろくんの前の席で、“後ろ向きスキンシップ”しちゃおっかな~♡」
すみれは苦笑しながらも「通路側がいいです。周囲を見渡せますから」と自然に距離を詰めてきた。
ひよりは静かにメモ帳を取り出し、「バス内行動記録:開始」と書き込みを始める。
ユナはマントのまま乗車し、「この移動手段、我が結界の力をもってすれば瞬間移動も可能だが……」と謎の供述を始め、
イザベラは王女らしく凛として座っていたが、俺の斜め前という微妙なポジションを確保していた。
ユウと玖条も、それぞれ俺の周囲に潜り込んでおり、俺の座席はもはや防御不能の“ハーレム状態”だった。
(……た、楽しい遠足になる……はず、だよな……?)
バスが高速道路を抜けて、太平洋が見えてきた瞬間——車内がぱっと明るくなった。
「わぁ……海、だ」
「お兄ちゃん、ちゃんと見てる? 景色、すごいよ!」
碧純の指差す先には、きらめく水平線。
だが、それ以上に俺の視界には、ヒロインたちの圧力が満ちていた。
アクアワールド到着後——
まず最初に向かったのは、巨大水槽エリア。
悠々と泳ぐサメたち、クラゲの幻想的な光、アシカのショー。
「弘弥くん、ほら、イルカが跳ねたよ!」(すみれ)
「この子たち、どんな思考パターンで動いてるのかな……分析しがいがあるわね」(ひより)
「さっきのクラゲ、ひろくんに似てなかった? なんとなく、流されてる感じが♡」(瑠衣)
どこを歩いても、誰かが隣にいた。
誰かが話しかけてくれて、誰かが笑ってくれて、誰かがちょっぴり俺に近づいてくる。
……まるで水族館という名のラブコメ迷路。
そして、事件はその後の“自由行動時間”に起きた。
グループを分けての移動で、俺と碧純、すみれ、瑠衣、ひよりの5人班になった。
さすがに偏ってるだろ!と叫びたくなったが、抽選で決まったと聞いては仕方ない。
「じゃあまず、おみやげコーナーね!」(瑠衣)
「食べ歩きもありますよ。大洗名物“しらすソフト”など……」(すみれ)
「観察対象の購買傾向も記録しておきますね」(ひより)
——そして、トドメのように、碧純が腕を組んできた。
「今日は……誰にも渡さないから。いいでしょ?」
俺は返す言葉も見つからず、そのまま歩き出すしかなかった。
春の遠足。
アクアワールド大洗の旅。
波音とヒロインたちのさざめきに包まれて——
俺の平穏は、またしても海の泡と消えていくのであった。
(つづく)
俺たち2年B組は、茨城県が誇る巨大水族館——アクアワールド大洗へと向かっていた。
バスの中は、すでに修羅場の予感が満載だった。
「お兄ちゃん、席……ちゃんと隣だよね?」
出発前に碧純が確認してきたが、それを聞いていた瑠衣がニヤリと笑った。
「え~、じゃああたしはひろくんの前の席で、“後ろ向きスキンシップ”しちゃおっかな~♡」
すみれは苦笑しながらも「通路側がいいです。周囲を見渡せますから」と自然に距離を詰めてきた。
ひよりは静かにメモ帳を取り出し、「バス内行動記録:開始」と書き込みを始める。
ユナはマントのまま乗車し、「この移動手段、我が結界の力をもってすれば瞬間移動も可能だが……」と謎の供述を始め、
イザベラは王女らしく凛として座っていたが、俺の斜め前という微妙なポジションを確保していた。
ユウと玖条も、それぞれ俺の周囲に潜り込んでおり、俺の座席はもはや防御不能の“ハーレム状態”だった。
(……た、楽しい遠足になる……はず、だよな……?)
バスが高速道路を抜けて、太平洋が見えてきた瞬間——車内がぱっと明るくなった。
「わぁ……海、だ」
「お兄ちゃん、ちゃんと見てる? 景色、すごいよ!」
碧純の指差す先には、きらめく水平線。
だが、それ以上に俺の視界には、ヒロインたちの圧力が満ちていた。
アクアワールド到着後——
まず最初に向かったのは、巨大水槽エリア。
悠々と泳ぐサメたち、クラゲの幻想的な光、アシカのショー。
「弘弥くん、ほら、イルカが跳ねたよ!」(すみれ)
「この子たち、どんな思考パターンで動いてるのかな……分析しがいがあるわね」(ひより)
「さっきのクラゲ、ひろくんに似てなかった? なんとなく、流されてる感じが♡」(瑠衣)
どこを歩いても、誰かが隣にいた。
誰かが話しかけてくれて、誰かが笑ってくれて、誰かがちょっぴり俺に近づいてくる。
……まるで水族館という名のラブコメ迷路。
そして、事件はその後の“自由行動時間”に起きた。
グループを分けての移動で、俺と碧純、すみれ、瑠衣、ひよりの5人班になった。
さすがに偏ってるだろ!と叫びたくなったが、抽選で決まったと聞いては仕方ない。
「じゃあまず、おみやげコーナーね!」(瑠衣)
「食べ歩きもありますよ。大洗名物“しらすソフト”など……」(すみれ)
「観察対象の購買傾向も記録しておきますね」(ひより)
——そして、トドメのように、碧純が腕を組んできた。
「今日は……誰にも渡さないから。いいでしょ?」
俺は返す言葉も見つからず、そのまま歩き出すしかなかった。
春の遠足。
アクアワールド大洗の旅。
波音とヒロインたちのさざめきに包まれて——
俺の平穏は、またしても海の泡と消えていくのであった。
(つづく)
10
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる