同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一四四話 春の遠足──アクアワールド大洗の誘惑

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 春の陽射しが、制服の上からも心地よく感じられる朝。
 俺たち2年B組は、茨城県が誇る巨大水族館——アクアワールド大洗へと向かっていた。

 バスの中は、すでに修羅場の予感が満載だった。

「お兄ちゃん、席……ちゃんと隣だよね?」

 出発前に碧純が確認してきたが、それを聞いていた瑠衣がニヤリと笑った。

「え~、じゃああたしはひろくんの前の席で、“後ろ向きスキンシップ”しちゃおっかな~♡」

 すみれは苦笑しながらも「通路側がいいです。周囲を見渡せますから」と自然に距離を詰めてきた。

 ひよりは静かにメモ帳を取り出し、「バス内行動記録:開始」と書き込みを始める。

 ユナはマントのまま乗車し、「この移動手段、我が結界の力をもってすれば瞬間移動も可能だが……」と謎の供述を始め、

 イザベラは王女らしく凛として座っていたが、俺の斜め前という微妙なポジションを確保していた。

 ユウと玖条も、それぞれ俺の周囲に潜り込んでおり、俺の座席はもはや防御不能の“ハーレム状態”だった。

(……た、楽しい遠足になる……はず、だよな……?)

 バスが高速道路を抜けて、太平洋が見えてきた瞬間——車内がぱっと明るくなった。

「わぁ……海、だ」
「お兄ちゃん、ちゃんと見てる? 景色、すごいよ!」

 碧純の指差す先には、きらめく水平線。
 だが、それ以上に俺の視界には、ヒロインたちの圧力が満ちていた。

 アクアワールド到着後——

 まず最初に向かったのは、巨大水槽エリア。
 悠々と泳ぐサメたち、クラゲの幻想的な光、アシカのショー。

「弘弥くん、ほら、イルカが跳ねたよ!」(すみれ)
「この子たち、どんな思考パターンで動いてるのかな……分析しがいがあるわね」(ひより)
「さっきのクラゲ、ひろくんに似てなかった? なんとなく、流されてる感じが♡」(瑠衣)

 どこを歩いても、誰かが隣にいた。
 誰かが話しかけてくれて、誰かが笑ってくれて、誰かがちょっぴり俺に近づいてくる。

 ……まるで水族館という名のラブコメ迷路。

 そして、事件はその後の“自由行動時間”に起きた。

 グループを分けての移動で、俺と碧純、すみれ、瑠衣、ひよりの5人班になった。
 さすがに偏ってるだろ!と叫びたくなったが、抽選で決まったと聞いては仕方ない。

「じゃあまず、おみやげコーナーね!」(瑠衣)
「食べ歩きもありますよ。大洗名物“しらすソフト”など……」(すみれ)
「観察対象の購買傾向も記録しておきますね」(ひより)

 ——そして、トドメのように、碧純が腕を組んできた。

「今日は……誰にも渡さないから。いいでしょ?」

 俺は返す言葉も見つからず、そのまま歩き出すしかなかった。

 春の遠足。
 アクアワールド大洗の旅。

 波音とヒロインたちのさざめきに包まれて——
 俺の平穏は、またしても海の泡と消えていくのであった。

(つづく)
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