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第一四五話 水族館パニック──遠足はドタバタの海へ
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アクアワールド大洗。
巨大なサメの泳ぐ大水槽に、照明が変わるたびに色を変えるクラゲ。
幻想的な雰囲気の中で、俺たちは自由行動の時間を満喫……できていた“はず”だった。
「わあっ!? お兄ちゃん、タッチプール! ヒトデって、ぬるぬるするのっ!?」
叫び声とともに、碧純が俺の腕にしがみつく。
彼女の指先にはヒトデのかけらが残っており、その感触に耐え切れなかったようだ。
「おい、俺に拭きつけるな! ハンカチ持ってこいって!」
後ろでは、瑠衣がタッチプールに手を突っ込んでいた。
「キャー! わたしのネイルがサメに狙われてる~♡」
いや、それはただの小型サメです。ネイルに興味なんかない。
一方、すみれは、
「……このウミガメの泳ぎ方、どこか弘弥くんに似てるわね。ちょっとだけ、ゆったりしてて……ふふっ」
などと、意味深な笑みを浮かべながら隣に並んでくる。
「俺はカメかよ!? 見た目のこと言ってるのか泳ぎ方なのかで意味が変わるぞ!」
そして、案の定ひよりはメモを取りながら突っ立っている。
「“ヒロインたちによる水中生物との同調傾向”……観察価値:高」
「記録はいいけど、せめて一緒に楽しもうって気はないのか?」
ユナはというと、やっぱりやらかしていた。
「我が《深淵の目》が反応している……あのクラゲ水槽、ただの装飾ではないな……」
そして次の瞬間、水槽の前で呪文を唱え始めた。
「待て、止めろ! 周囲の人が見てるって!」
さらに玖条瑠衣が合流し、背後から俺の腰に抱きついてくる。
「わたしねぇ、この後のペンギンショー、一緒に見たいな~♡ ね? ひろくん、ひろくん?」
「おまっ、くっつくな! 今明らかに色々当たってるんだって!!」
そして極めつけに——
「弘弥様、ペンギンの群れを見に行く予定でしたのでは?」
イザベラが、優雅にペンギンのパンフレットを持って近づいてくる。
「も、もちろん……行くよ。誰か1人ずつ! ……って、うわあっ!?」
全員が一斉に俺の腕を掴んだ瞬間、俺は体勢を崩してその場に倒れ込んだ。
床に背中を打ち、視界には制服のスカートがずらりと広がり——
「——って、どこ見てるんですか!? この変態!!」
碧純の鉄拳が振り下ろされた。
観客の親子連れが“何事!?”とざわつき始め、
スタッフが「お静かにお願いします」と駆け寄ってくる始末。
俺は、すべてを諦めたような顔で天井を見上げた。
(……もう、いっそ魚になりたい)
春の遠足。
水族館内、戦場と化す。
(つづく)
巨大なサメの泳ぐ大水槽に、照明が変わるたびに色を変えるクラゲ。
幻想的な雰囲気の中で、俺たちは自由行動の時間を満喫……できていた“はず”だった。
「わあっ!? お兄ちゃん、タッチプール! ヒトデって、ぬるぬるするのっ!?」
叫び声とともに、碧純が俺の腕にしがみつく。
彼女の指先にはヒトデのかけらが残っており、その感触に耐え切れなかったようだ。
「おい、俺に拭きつけるな! ハンカチ持ってこいって!」
後ろでは、瑠衣がタッチプールに手を突っ込んでいた。
「キャー! わたしのネイルがサメに狙われてる~♡」
いや、それはただの小型サメです。ネイルに興味なんかない。
一方、すみれは、
「……このウミガメの泳ぎ方、どこか弘弥くんに似てるわね。ちょっとだけ、ゆったりしてて……ふふっ」
などと、意味深な笑みを浮かべながら隣に並んでくる。
「俺はカメかよ!? 見た目のこと言ってるのか泳ぎ方なのかで意味が変わるぞ!」
そして、案の定ひよりはメモを取りながら突っ立っている。
「“ヒロインたちによる水中生物との同調傾向”……観察価値:高」
「記録はいいけど、せめて一緒に楽しもうって気はないのか?」
ユナはというと、やっぱりやらかしていた。
「我が《深淵の目》が反応している……あのクラゲ水槽、ただの装飾ではないな……」
そして次の瞬間、水槽の前で呪文を唱え始めた。
「待て、止めろ! 周囲の人が見てるって!」
さらに玖条瑠衣が合流し、背後から俺の腰に抱きついてくる。
「わたしねぇ、この後のペンギンショー、一緒に見たいな~♡ ね? ひろくん、ひろくん?」
「おまっ、くっつくな! 今明らかに色々当たってるんだって!!」
そして極めつけに——
「弘弥様、ペンギンの群れを見に行く予定でしたのでは?」
イザベラが、優雅にペンギンのパンフレットを持って近づいてくる。
「も、もちろん……行くよ。誰か1人ずつ! ……って、うわあっ!?」
全員が一斉に俺の腕を掴んだ瞬間、俺は体勢を崩してその場に倒れ込んだ。
床に背中を打ち、視界には制服のスカートがずらりと広がり——
「——って、どこ見てるんですか!? この変態!!」
碧純の鉄拳が振り下ろされた。
観客の親子連れが“何事!?”とざわつき始め、
スタッフが「お静かにお願いします」と駆け寄ってくる始末。
俺は、すべてを諦めたような顔で天井を見上げた。
(……もう、いっそ魚になりたい)
春の遠足。
水族館内、戦場と化す。
(つづく)
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