同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一五四話 創作インスピレーション刺激作戦──ヒロインたち、総力戦!

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 次の日の放課後。
 俺はいつものように帰宅し、机の前に座った。

 けれど、画面の前で手が止まる。

(やっぱり……言葉が出てこない)

 そんなときだった。

「ただいま~……って、なんで全員いるの!?」

 玄関を開けた瞬間、リビングに並ぶヒロインたちの顔、顔、顔。

 すみれはホワイトボードを抱え、瑠衣はリボンでデコられたタブレット端末、ひよりは資料ファイル、イザベラはティーセットを両手に持ち、ユナは魔法陣の紙(?)を床に貼っていた。

 そしてその中央で、碧純が両手を腰に当てて宣言する。

「名付けて——“創作インスピレーション刺激作戦”、発動です!」

「いや待って、俺の許可は!? 俺の部屋は!?」

「兄の創作のため、もはやそんなものは不要!」(碧純)

「ひろくんを奮い立たせるために、みんなで手分けして考えてきたんだよ~♪」(瑠衣)

「まずは“王道ラブコメシチュエーション再現コーナー”ですわ♡」(イザベラ)

 彼女は突然、テーブルの上でお茶をこぼす。

「キャッ……! 弘弥様、ハンカチを……っ」

「急展開すぎるだろ!? しかも天然風を装って計算され尽くした演技!」

「次! “幼馴染再現で甘える妹ポジ”体験コーナー!」(碧純)

 彼女は俺の膝の上に座ってきて——

「ねぇ、お兄ちゃん……わたしが一番だよね?」

「こらっ! 落ち着けっ、いやほんと物理的に!」

「“ツンデレ属性からの急接近”再現もあります!」(すみれ)

「べ、別にあんたの創作を心配してるわけじゃないんだからね……っ。でも、ほら、書きなさいよ。私のために」

 それぞれが準備してきた“属性再現エピソード”を実演してくる。

 次はユナの番だった。

「……この術式を発動すれば、貴様の創作意欲を闇の領域より喚び起こすことが……」

「おい待て、ペンが勝手に動き始めたんだが!?」

 そして最後に、ひよりが静かに言った。

「……ねえ。私たち、みんな……“あなたの物語の中”で、生きてるんだよ?」

 その言葉が——胸に刺さった。

 俺が、言葉を失っていたとき。
 誰よりも俺の世界を理解しようとしてくれたのは、彼女たちだった。

「……ありがとう、みんな。少しだけ……少しだけ、書けそうな気がする」

 その夜、再び机に向かった俺の指は、ゆっくりと、しかし確かに動き出していた。

 画面に浮かび上がる一行目——

『“君が好きだ”と、やっと言えた春の終わりに——』

 それは、俺と、俺のヒロインたちの物語の“再開”だった。

(つづく)

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