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第一五五話 お忍びの姫と、パンツ作家の夜──衝撃のご訪問
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春の夜。
俺の部屋は、いつものように静かで、蛍光灯の明かりだけがページを照らしていた。
カタカタ、カタカタ……。
俺は、ようやく戻ってきた創作の波に乗っていた。
机の上には、参考資料と、創作のお守り……
——数日前にもらった“パンツ”たちが積み上げられていた。
香り。
色彩。
質感。
それぞれが俺の物語に“実感”を与えてくれる。
「この構図……主人公がヒロインの部屋に忍び込んで、あえてパンツをかぶる理由は……“尊さ”だ……」
そう、一部の狂気が、創作には必要なのだ。
俺は今、完全に“モード”に入っていた。
だから——
玄関のチャイムが鳴ったとき、まったく気づかなかった。
だから——
部屋のドアが開いて、誰かが入ってきたことにも気づかなかった。
だから——
「……っふ、ふふっ……ぶっ……あははははははははっっっ!!!」
鼓膜を突き抜ける大爆笑の声で、俺はようやく現実に引き戻された。
慌てて振り返ると、そこには——
銀髪のポニーテールに気品あるスーツ。
身長170近く。スラリとした脚。
王族の証であるブローチを胸元に輝かせる、完璧な美貌。
——内親王殿下だった。
「ま、まさか……っ、本当にっ……あ、あなた、パンツを……っ、頭に……ふ、ふふ、ふはははは!!」
「い、いやいやいや!? 違う! これは、創作の、イメージトレーニングであって!」
「くっ……ひぃ……っふ、ふふっ……」
涙を流しながら、内親王は腰を抜かすように俺のベッドに座り込んだ。
「だって……ファンレターに、“いつか先生の創作風景を生で見たい”って書いたのに……これが……っ、これが現実なの!? もう最高、もう……わたくし、帰りたくありませんっ!!」
「こ、これは完全に誤解だ! そもそもなぜ、王女殿下が……!」
「……わたくしは、内親王エレノア・暁・フェリシア・ル・エーデルワイス・リィ……まあ、“エレナ”でいいですわ。覚えていらっしゃるかしら? 電話だけは何度か……」
その言葉で、俺の記憶が蘇った。
そうだ。
以前、イザベラの滞在延長が危うくなったとき——
俺は最後の頼みとして、彼女に電話をした。
そのとき、彼女は言ってくれた。
『何か困ったことがあれば、わたくしに連絡なさい。あなたの物語の続きが読みたいのです』
以来、何度か電話で話す仲になっていた。
だが、まさか……本当に家に来るとは……。
「だから、今日。ふと“先生の様子が気になる”と思いまして。……ちょっと空を飛んできましたの♡」
「それお忍びって言わない! 王女的にそれでいいのかよ!」
「よくなくても、いいんです。だって……“創作中にパンツをかぶる作家”なんて、世界中探しても先生だけですもの!」
その日、俺の部屋には——
王族の血を引く、最も尊き“変人美少女”が、正式に居座ることとなった。
(つづく)
俺の部屋は、いつものように静かで、蛍光灯の明かりだけがページを照らしていた。
カタカタ、カタカタ……。
俺は、ようやく戻ってきた創作の波に乗っていた。
机の上には、参考資料と、創作のお守り……
——数日前にもらった“パンツ”たちが積み上げられていた。
香り。
色彩。
質感。
それぞれが俺の物語に“実感”を与えてくれる。
「この構図……主人公がヒロインの部屋に忍び込んで、あえてパンツをかぶる理由は……“尊さ”だ……」
そう、一部の狂気が、創作には必要なのだ。
俺は今、完全に“モード”に入っていた。
だから——
玄関のチャイムが鳴ったとき、まったく気づかなかった。
だから——
部屋のドアが開いて、誰かが入ってきたことにも気づかなかった。
だから——
「……っふ、ふふっ……ぶっ……あははははははははっっっ!!!」
鼓膜を突き抜ける大爆笑の声で、俺はようやく現実に引き戻された。
慌てて振り返ると、そこには——
銀髪のポニーテールに気品あるスーツ。
身長170近く。スラリとした脚。
王族の証であるブローチを胸元に輝かせる、完璧な美貌。
——内親王殿下だった。
「ま、まさか……っ、本当にっ……あ、あなた、パンツを……っ、頭に……ふ、ふふ、ふはははは!!」
「い、いやいやいや!? 違う! これは、創作の、イメージトレーニングであって!」
「くっ……ひぃ……っふ、ふふっ……」
涙を流しながら、内親王は腰を抜かすように俺のベッドに座り込んだ。
「だって……ファンレターに、“いつか先生の創作風景を生で見たい”って書いたのに……これが……っ、これが現実なの!? もう最高、もう……わたくし、帰りたくありませんっ!!」
「こ、これは完全に誤解だ! そもそもなぜ、王女殿下が……!」
「……わたくしは、内親王エレノア・暁・フェリシア・ル・エーデルワイス・リィ……まあ、“エレナ”でいいですわ。覚えていらっしゃるかしら? 電話だけは何度か……」
その言葉で、俺の記憶が蘇った。
そうだ。
以前、イザベラの滞在延長が危うくなったとき——
俺は最後の頼みとして、彼女に電話をした。
そのとき、彼女は言ってくれた。
『何か困ったことがあれば、わたくしに連絡なさい。あなたの物語の続きが読みたいのです』
以来、何度か電話で話す仲になっていた。
だが、まさか……本当に家に来るとは……。
「だから、今日。ふと“先生の様子が気になる”と思いまして。……ちょっと空を飛んできましたの♡」
「それお忍びって言わない! 王女的にそれでいいのかよ!」
「よくなくても、いいんです。だって……“創作中にパンツをかぶる作家”なんて、世界中探しても先生だけですもの!」
その日、俺の部屋には——
王族の血を引く、最も尊き“変人美少女”が、正式に居座ることとなった。
(つづく)
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