同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一五九話 防衛戦線、発動──王女様はもう来ないで!?(前編)

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“パンツ追及裁判”から二日後。

 俺はようやく、創作机に戻って平穏を取り戻しかけていた……ように“見えた”かもしれないが、
 その実、碧純の目はレーザー並の鋭さで常に俺の動向を監視していた。

 廊下に設置された足音センサー。
 玄関にはスマートロックと監視カメラ(某通販サイトで翌日配送)を追加。
 そして俺の机の棚には「異国の布類搬入禁止」の赤札がぴったりと貼られていた。

「防衛作戦、名付けて“王女様よ、お帰り願います作戦”よ」

 碧純は真顔でそう言った。
 その姿は、制服の下に私服ジャケット、腕にはデジタル腕時計。もはや家庭版スパイだった。

「いや、そもそも来るとは限らないし……連絡もないし……」

「“限らない”ってことは、“来る可能性もある”ってこと」

 碧純はノートパソコンを開いて、王女のこれまでの来訪タイミングと月の満ち欠け、気温などから“次回来訪予測”まで立てていた。

「……来週の木曜、90%で来る」

「なんだこの精度……」

 さらに彼女は仲間を呼んでいた。

「一ノ瀬ひより、防衛システム構築協力要請、受理。通気口にも熱センサーを設置完了」

「え、なんか軍事拠点じみてきたぞ」

「あと、王女様の“香水の香り検知機”も導入済。ユナちゃんが協力してくれた」

 そして、そのユナは——

「結界を張っておいた。“他者の魅了”に弱い男子が影響を受けぬよう精神防壁強化済み。香り耐性も加味した」

「お前の魔術、妙に実用性あるな……?」

 さらにすみれも、あくまで表向きは“心配だから”という名目で加勢。

「もし王女様が来られたら……まずは話し合いの場を設けて、穏便に。けれど……碧純ちゃんの気持ちも、ちゃんと尊重する」

 つまり、
 家中が、俺の部屋が、王女“エレナ”という名の台風から“守られるべく”動いていたのだ。

 俺は、ソファに沈んで天井を仰いだ。

(……守られてるというか、もはや幽閉では?)

 だが、その夜。

 ぴんぽーん。

 再び鳴ったインターホンに、家中の空気が凍りついた。

 モニター越しに映ったのは——

 変装したキャップ姿、だが隠しきれない気品とシルエット。

「ごきげんよう、先生♡ また来ちゃいました」

 エレナ内親王、再訪。
 防衛作戦、決戦の幕が上がる。

(つづく)

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