同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一六一話 修羅場突入──嗅ぎつけた恋の火薬庫(前編)

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 放課後の教室。

 春の空気が緩み始めた頃、恋の空気は逆に、じわりと緊張を増していた。

「ねえ、ひろくんってさ……最近、なんか“香り”変わった?」

 瑠衣の何気ない一言が、すべての始まりだった。

「香り……?」

「うん。なんかこう……高貴な感じ? っていうか、香水って感じ? しかも……あれ、なんだっけ……イザベラちゃんのともちょっと違う、海外の王女系のやつ」

 その言葉に、すみれの手が止まった。

「まさか……また、誰かと“接触”が?」

 さらにひよりがすっとノートを取り出す。

「新しい女子人物との接触記録:ここ三日以内に体表付着レベルの香気あり。識別未確定」

「え、それ観察データとして取ってたの!? こわっ!!」

「観察対象が変化したら、記録しないと。“弘弥生態学”の基本です」

 ユナが目を細め、ぼそっと呟いた。

「王家の香り……闇の血脈……まさか、彼の部屋に異国の精霊がまた……」

「言い方が怖い!」

 そして最後に、イザベラが、静かに口を開いた。

「……もしかして、エレナ殿下が再び、先生の元を訪れたのでは?」

 静まり返る教室。

 その瞬間、全員の視線が、一斉に俺の席を射抜いた。

 ……ちなみに俺、いまトイレに行ってて席にいません。

「確認しましょう」
「直接、聞こう」
「裁く時は今だ」

 ヒロインたちは無言で立ち上がり、俺の帰りを待たずして行動を開始した。

 その日の夕方。
 俺が帰宅すると、玄関に並ぶ、五足の女子用スニーカー。
 リビングには、緊張に包まれた沈黙。

 すみれ、瑠衣、ひより、ユナ、イザベラ——全員集合。
 そして中央に立つのは、当然——碧純。

「おかえり、お兄ちゃん。……ちょっと、大事なお話、あるよ」

 “審問会”が始まる。
 すべての恋と嫉妬と疑念が交差する、春の夕暮れに。

(つづく)

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