同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一七二話 煩悩の果てに──ヒロインたちの微笑みと許しの朝

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 春の土曜の朝。
 鳥のさえずりが遠くから聞こえる。
 カーテンの隙間から差し込む光が、柔らかな金色に部屋を照らしていた。

 いつもより遅い朝。
 けれど俺は、その静寂の中で、ある"気まずすぎる現実"と向き合っていた。

 ベッドの中。
 布団の下。
 下半身の、生ぬるく濡れた感触。

(……嘘だろ……また……)

 夢の記憶は断片的だった。
 ネグリジェに包まれた彼女たち。
 すべてのヒロインが、柔らかく微笑みながら俺に触れ、囁き、寄り添い……
 まるで夢とは思えないほど鮮明だった。

 気がつけば、下着だけでは到底抑えきれないほどの“痕跡”が布団に広がっていた。
 そしてなにより——

 部屋の空気が、どこか甘ったるく、湿ったような匂いに満たされていた。

(……やばい……これ……絶対にバレる……)

 完全に終わった。
 人として終わった。
 そう思いながら、顔を覆ったそのときだった。

「……あ、お兄ちゃん起きてる……?」

 扉の向こうから、小さな声が聞こえた。

 碧純だった。

 思わず「待ってくれ!」と叫びたかったが、すでにドアは開きかけていた。

 ——そして。

「みんな、もう入っていいよ」

 その声とともに、昨日の“ネグリジェ修羅場メンバー”が、順番に部屋へと入ってきた。

 碧純。
 すみれ。
 瑠衣。
 ひより。
 ユナ。
 イザベラ。

 全員、昨夜と同じネグリジェ姿のまま。

「ちょっ……ちょっと待って!? なんで!? 入ってくるなって!!」

「朝の体調チェックしないと」(すみれ)
「観察記録の続きがあるから」(ひより)
「だって、すっごい顔でうなされてたから!」(瑠衣)
「魔力の余波でまた倒れたら危険」(ユナ)
「昨夜のあの様子は……完全に“我々”のせいですわね」(イザベラ)

 彼女たちは慣れた様子で俺のベッドを囲み、
 そのまま、俺の布団に目を落とした——そして。

 静寂。
 ほんの数秒。
 でも、永遠のように感じられた。

 彼女たちは見てしまった。
 俺の……大量の夢精痕跡を。
 そして、それよりも明確に——

 この部屋全体に漂う“精子臭”を。

 羞恥で全身が燃えるようだった。
 顔を覆ってうずくまる。
 もう死にたい……そう思った瞬間——

「……ふふっ」

 最初に笑ったのは、すみれだった。

「やっと……だね」

 その声は、驚きでも、怒りでもなかった。
 どこか、安堵に満ちた……優しい笑いだった。

「やっぱり、ちゃんと……興奮してくれてたんだ」

 碧純が、そっと呟いた。
 その頬はほんのり赤く染まり、視線はどこか恥ずかしそうに伏せられていた。

「そりゃあ……あんだけスケスケにして、反応なかったら逆に凹むよね~!」
 瑠衣が肘でひよりを軽くつつくと、

「部屋に広がる栗の花臭い観測。データ的にも想定通り。むしろ一日目より分泌量増加、夢の中での反応継続と推定」

「記録やめてぇぇえええええ!!」

 俺が叫んでも、彼女たちの表情は——どこか嬉しそうだった。

 ユナは神妙な面持ちで小さく頷き、
「“布越しの色香”という魔性の力……ようやく証明されたな」

 イザベラはほっとしたように目を伏せ、
「先生ではなく、我々の“ネグリジェ”に……それが、わたくしにはとても嬉しいのです」

 もう、俺はどこにも逃げられなかった。
 けれど、不思議と——悪くなかった。
 彼女たちがこんなにも俺の反応を気にしていてくれたこと。
 そしてそれが“伝わって”いたことが。

 今この瞬間だけは、煩悩さえも肯定されたようで。

「じゃあ、次はもっと……すごいやつ着てみよっか♡」
「記録係としては、刺激値強化も検討項目」
「お兄ちゃん、楽しみにしててね?」

 俺の春は、まだまだ終わりそうになかった。

(つづく)
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