同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一八四話 尾行からの突撃訪問──平穏な暮らしは幻

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翌日、水曜日の夕方。

 学校から帰宅した俺は、ついに念願だった「静かな夕方」を手に入れた。

 庭の水撒きを終え、ウッドデッキに腰を下ろす。
 鳥のさえずり。
 頬に感じる春風。
 そして、碧純が台所でカレーの準備をしている音。

 (これだよ、これ……)

 喧騒のない生活。
 パンツも夢精も観察もない、穏やかな時間。

 だが、その平穏は、突然崩れた。

「お兄ちゃん……ごめん。なんか……外、すごく視線を感じる……」

 碧純の声に、俺は身を乗り出して庭の方を見た。

 フェンスの向こう。
 生け垣の陰。

 ……動いた。

「っ……やば」

 俺はカーテンをそっと引き、玄関の鍵を確認しながら声を潜める。

 その時——

「いっけえええええええええええええっ!!!」

 ガチャリ。

 え、嘘だろ!?
 合鍵!? いやいや俺、まだ誰にも渡してない!!

「おじゃましまぁす♡」

 先陣を切って現れたのは、ルナ。
 続いて、すみれ、ひより、ユナ、りあ、そして瑠衣までもが、ずらりと玄関に並んでいた。

「え、ちょっと待って! なんで!? どうやって!?」

「ひよりが、足跡から導き出した。靴底の摩耗と、通学ルート、駅からの移動速度でこのエリアに特定可能と判断」

「GPSより怖いこと言わないでえええええ!!」

「あと、近所のおばちゃんが“最近若い男の子が引っ越してきた”って言ってたから!」(瑠衣)

「情報網、広すぎるだろ!!」

 俺が頭を抱えて叫んでいると、すみれがふわりと微笑んで近づいた。

「……ずいぶんと、素敵な隠れ家を持ってたのね、弘弥くん」

 怖い。
 その優しさの中に、何かこう……業火の気配を感じる。

「ま、まってくれ! これは違うんだ! 突然引っ越したわけじゃなくて……!」

「黙ってたんだよね?」(碧純)

「うっ……」

 そして始まる、家中の探索。
 勝手にリビングに上がり、冷蔵庫を開け、ソファに寝転がり、果ては浴室までチェック。

「わー! 広いじゃーん! これって……誰かと住むために用意したでしょ~?」(ルナ)

「ここが弘弥の“執筆部屋”か……観察記録に最適な位置ですね」(ひより)

 平穏な暮らし。
 それは、夢だった。

(つづく)

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