同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一八九話 母公認とカバンの中──それは誰のために

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 母・すみこの来訪から一夜明けた。

 朝のリビングには、まだどこか“母公認”という言葉の余韻が漂っていた。

「弘弥くんのお母様……素敵な方だったわね♡」(すみれ)

「『避妊しなさいよ?』って、あれ、完全に許可じゃん!」(瑠衣)

「つまり、我々は正妻戦争に正式参加可能ということ……」(ひより)

「うちの弘弥も大人になったのねぇ……♡」(ルナ)

 みんな朝からテンションが高い。
 俺は一人、頭を抱えていた。

(……もう、誰か止めてくれ。俺の理性が保たん……)

 そんな中、ひときわ静かな気配があった。
 りあが、洗面所で身支度を整えていた。

 鏡の前で長い黒髪を梳きながら、制服のリボンを結ぶ。

 静かに微笑むその横顔に、俺は気づかなかった。

 彼女の足元に置かれたカバン。

 そのチャックが半開きになっていて、そこから——

 ちらりと覗く、銀色の小さなパッケージ。

(……あれって……まさか……)

 避妊具。

 明らかに、そうだった。

 誰のもの? なぜ入っている? どういう意図?

 数秒の間に、頭の中でぐるぐると想像が回る。

 ——その時、りあがふとこちらを振り向いた。

 そして、小さく微笑んだ。

「……安心して。使うかどうかは、弘弥くんが決めていいから」

「!?!?!?!?!?」

 笑顔が、どこか艶やかだった。
 そして彼女は、何事もなかったかのようにカバンを閉め、朝食の席へ向かっていった。

 残された俺は、洗面所でただ一人、心臓をバクバクさせながら呟いた。

「……落ち着け……深呼吸……。これはきっと、なんかの……冗談……」

 けれど、どこかで気づいていた。

 ——もう、冗談では済まされないラインに、足を踏み入れつつあることに。

(つづく)

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