同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第二六四話 「夕暮れバーベキューと、跳ねた油と、思わぬ密着──これぞ夏のラッキースケベ！」

夕陽がオレンジに空を染め、潮風が涼しくなってきたころ──

俺たちは、宿の庭でバーベキューの準備をしていた。

「炭、いい感じに熾きてきたよー！」
「弘弥くん、トング持ってる？ 焼き場の担当お願い！」
「お兄、肉の順番、ちゃんと焼ける順でいってよね！」

「いや、俺そんなバーベキュースペシャリストじゃないから！！」

ジュウウウウウウ……ッ！

肉が焼ける音、タレの匂い、煙。

そして……事件は起きた。

◆　◆　◆

「きゃっ！！ 熱っ……！！」

飛び跳ねた油が、すみれの太ももにピチャッと。

「すみれさん！？ 大丈夫！？」

「……ちょ、ちょっと熱い、かも……」

「冷やさないと！」

俺は慌ててタオルを氷水に浸し、彼女の脚にそっと押し当てた。

「ひゃっ……あ……そ、そこは……」

「え、ご、ごめん！？」

「う、ううん……ありがとう。でも……あんまり見ないで……」

（この角度、この距離、この……柔らかさ……ッ！）

◆　◆　◆

「次は私の番！」

ルナがノリノリで肉を焼きに来たかと思えば、
「お兄のために最高の焼き加減でいくよ～♡」と近づいてきて──

「えいっ！」

トングを振りかぶった瞬間、バランスを崩して──

「うわっと！！？」

ドーン！！

「わっ……胸！ 胸が顔に！！」
「えっ、マジ！？ ラッキースケベ発動！？ ちょっと笑ってる場合じゃないってぇ～～♡」

「笑うなあああああああ！！！」

◆　◆　◆

「うぐっ……け、煙が……！」

炭火の煙が風向きの変化で急に俺に直撃。
目を閉じて後ずさりしながら、振り向いたら──

「きゃっ！？ 弘弥くん！？」

「ご、ごめっ……」

抱きついた相手は、りあだった。

「……っ、ち、近い……。……うれしい……けど……どこに、触れてる……の……？」

「うわああああああああ！！！！！！」

◆　◆　◆

一方。
イザベラは串焼きをかじりながら、ぽそりと呟いた。

「わたくしの国では、これは“婚姻前儀式”に近い距離感です」

「文化違いすぎるよ！！！」

◆　◆　◆

ひよりはひよりで、観察ノートに「ラッキースケベ発生率：肉投入後15分がピーク」などと書き込んでいた。

「科学的に検証してる場合じゃないのぉぉぉ！！！」

◆　◆　◆

そんなこんなで大騒ぎの末。

焼けた肉と野菜を囲みながら、
ヒロインたちは笑って、照れて、真っ赤になって──

そして、俺はその光景を見ながら、思った。

（……これが、俺の“今”なんだな）

海と夕日と、美少女たちの笑顔と。
ちょっとだけ、エッチなハプニングと。

──たぶん、人生で一番楽しい夏が、

今、ここにある。