同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三〇四話 「手伝ってあげようか?──看護師と自慰と唐突な告白」

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 診察地獄を終えたその夜。

 俺は、疲れ果てた体で布団に倒れ込んだ。

 頭の中では、医者の真顔での「胸を張って自慰しなさい」が何度もリフレインしていた。

(もうだめだ……なんだこの人生……)

 そんなとき、LINEの通知音。

 ──篠宮みつき。
『今から部屋行っていい?』

 ◆ ◆ ◆

 俺の部屋。

「おじゃましまーす」

 ゆるっとした部屋着のまま、みつきが入ってくる。

「さっきの検査、マジで笑ったよね~。いや、笑っちゃいけないんだけどさ」

「完全に笑ってただろ……」

「だってあんな真面目に『自慰しろ』とか、笑わずに聞けるほうが変だよ」

「それはそうだけどさ……」

 みつきは俺のベッドに腰掛け、ニヤッと笑う。

「ねえ、弘弥。あんた、やっぱ処理してないんでしょ?」

「……は?」

「だったらさ、手伝ってあげようか?自慰行為」

「はああああああああ!?!?」

「何その反応。こっちは看護師だし、実地指導も業務のうちってことで?」

「手伝ったら自慰じゃないじゃん!!」

「──ご明察! 流石に作家だね」

「作家でなくてもわかるよ!!」

 ◆ ◆ ◆

 俺が頭を抱えていると、
 みつきは少しだけ真剣な顔になって、ぽつりと呟いた。

「……でもさ、もし弘弥が本気で悩んでるなら……」

「え?」

「私、別に……その、初めてが弘弥でも構わないよ?」

 空気が止まった。
 時計の音すら聞こえなくなるような、静寂。

「……なに言ってんだよ……」

「いや、だから、私は今まで誰ともそういうことなくて、
 処女っていうか──まあ、仕事柄そういう話とか経験とか多いけど、自分は一度もなくてさ」

「でも、もし相手が弘弥なら、別に……って思ってた」

 唇の端を噛みながら、目をそらす。

 それは、いつものお姉さんぶったみつきじゃなくて。
 ほんの少しだけ、素の彼女だった。

「お前、ふざけ……てないのか?」

「ふざけてないよ。……好きだもん。あんたのこと」

 唐突すぎる告白。
 けれど、その言葉は、静かに胸の奥で響いた。
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