同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第三一〇話 「新たな隣人──再び近づく影」

　二学期が始まったばかりで、また新たな日常が始まった。

「弘弥、お疲れ～！」

　学校から帰ると、ルナがすでに部屋で待機していた。
　いつも通り、明るく元気なルナの笑顔が迎えてくれる。

「ただいま、ルナ。早いな」

「ちょっと、宿題してたからさ！ あ、今日はお兄の帰りを待ってたんだよ！」

「俺の帰り？」

「あー、そっか。今日は夜、みんなで鍋しようって決めたんだよ！」

「おお、そうだったな」

　そのまま、みんなで夕飯の準備を始める。

　──しかし、そんな何気ない日常の中で、ひとつだけ気になることがあった。

「……隣の部屋、なんか最近物音しない？」

「え、ルナ、隣？」

「うん。今、引っ越ししてるみたいなんだよね、隣のアパート」

「え、引っ越し？」

「うん、さっきも見たんだけど、荷物運び込んでる人がいた」

「そうか……」

　少し気になりながらも、俺はその話を流し、鍋の準備に戻った。

　しかし──

　その晩、部屋で休んでいるときに、ふと音が聞こえてきた。

　ドタドタと、隣から荷物を運び込む音が。

「隣の部屋、また動いてるな」

「あ、また？」

　そのとき、ふと目に入ったのが隣のアパートの窓から見える明かりだった。

　そして、その瞬間──

　隣のアパートから出てきたのは、見覚えのある少女だった。

「……お？」

　驚くべきことに、その少女は……
　あの、あの時の後輩──あの、あの時の姿。

「まさか……！」

「……お兄？」

「いや、違うよな……」

　隣の部屋に引っ越してきたその少女は、
　俺が昔知っていた後輩──一歳年下の幼馴染、だと気づく瞬間だった。

　その後輩は、明るい笑顔で俺に気づいて手を振りながら言った。

「弘弥お兄ちゃん、久しぶり！」

　──その瞬間、時間が止まったような気がした。

「まさか、隣の部屋に……」

　そう言って、再び部屋の中に戻っていったその後輩。

　その一瞬、心臓がバクバクしているのがわかった。

（まさか、こんな形で再会するとは……）

　──でも、まだ、その後輩が誰なのかを本当に理解するのは、少し後のことだ。