同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三二四話 「夜の密着指導──先生、それ風紀的にどうなんですか」

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 黒沢先生の家で“保護”されることになった俺、真壁弘弥は、
 いま、静かに人生の転機に立っていた。

(なんで俺、黒沢先生の部屋のソファで勉強してんだ……)

 午後7時。
 目の前には国語のワーク。
 そして、キッチンでは何やら包丁の音が響いている。

 その音が止まり、しばらくして──

「弘弥くん、手を洗ってきて。ご飯できたわよ」

 くるりと振り返った先生は──

 白シャツの上に、紺色のエプロン姿。

 髪を後ろでざっくりまとめ、眼鏡を外した素顔は……
 なんというか、**「きれいなお姉さん」**そのものだった。

(なにこの距離感……ギャップで刺しにきてない……?)

 ◆ ◆ ◆

 夕食は和定食。

 塩鮭、冷奴、ほうれん草のおひたし、具沢山味噌汁。
 完璧すぎるラインナップに、俺はひたすら手を合わせる。

「先生……これ全部、先生が……?」

「自炊してるから。栄養偏ると生徒にも注意できないでしょ?」

(なんだこの“保護者感”……! え、俺、婿候補??)

 黙ってもぐもぐ食べていると──

「ご飯、おかわりいる?」

「……ください」

 即答だった。

 ◆ ◆ ◆

 食後。

「はい、勉強の続きよ。こっちの問題集、やってみて」

「え、今からですか!? 先生、優しくなかったんじゃ──」

「保護=甘やかし、じゃないの。あなたの周りの女子たちにも、
 “この子はまともに勉強してます”って証明してあげないと」

 先生は椅子を引き、俺の隣に腰掛ける。

(いや近いッ!!)

 薄手のシャツ越しに、肩が……腕が……
 ぴたりと寄り添うこの密着距離は、ほぼ恋人ポジじゃないの!?

「集中して。ほら、“誤用されがちな慣用句”、赤で囲って」

「えっ……せ、先生、ちょっと息がかかって……」

「人間だからね?」

 その微笑が反則だった。

 ◆ ◆ ◆

 ──その後、約2時間にわたる密着指導の末。

 俺は完全に、勉強とエプロンと先生の“香り”に脳が焼かれかけていた。

「今日はよく頑張ったわね。じゃあ、シャワー浴びてきて」

「えっ、いや、あの……」

「タオルとパジャマ、洗面所に置いてあるわ。……もちろん、男子用よ?」

(そりゃそうだよな!?)

「弘弥くん、覚えておいてね」

 先生は静かに言った。

「私は教師であると同時に、
 “あなたを守る最後の防波堤”でもあるつもりよ」

「先生……」

「だからって、気を許して変なこと考えたら──
 本当に叱るから。ベッドの下からでも引きずり出すわよ?」

「ぎゃああああ!? なんでそれ知ってる!?」

(先生、怖ぇぇぇ!! でも……なんか落ち着く……)

 ◆ ◆ ◆

 ──その夜、俺は黒沢先生の家の予備ベッドで、人生で一番“安全”な眠りについた。
 ……と、思っていた。

 窓の外には、静かに見下ろす数人の女の影。

(アレ? 今、カーテンの隙間に見えたの……ルナ?)

 そしてスマホの通知が震える。

 《りあ:逃げ場、なくなる前に帰っておいで。
 ……じゃないと、全員動くわよ?》
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