同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三二三話 「教師、動く──風紀と命を守るために」

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 ──俺は逃げていた。
 講堂から、校舎裏から、さらには恋からも。

 だが。

「よく逃げ切ったわね、真壁くん」

 静かな声がした。

 振り返ると、そこには――

 黒沢先生。

 スーツの隙なく整ったシルエット、軽く揺れる黒髪、知性を湛えた眼鏡越しの視線。
 そして、何より……その背後には、**ヒロインたちより怖い“風紀の圧”**が漂っていた。

「……せ、先生」

「ちょうど保健の連絡で講堂裏に来ていたの。あなた、いろんな意味で目立ってるわ」

「……はぁ」

「説明してもらえる? 校内での女の子たちとの乱闘、破壊行為、
 何より“ラブコメ主人公気取りで逃げ惑う男子生徒”っていう噂、耳にしてるけど?」

「いや、先生、それは誤解でして……!」

 ◆ ◆ ◆

 校長室に続く廊下で、俺と黒沢先生は並んで歩いていた。
 風紀室に連行……という名の“説教タイム”の始まりである。

「真壁くん、あなたね……」

「……はい」

「モテるのは、まぁ、仕方ないわ」

「はい?」

「私だって、あの年頃なら……あれだけの女子に囲まれてたら、少しは舞い上がると思う。
 でも、あなたの場合、完全に爆発物を四方にばら撒いたのと同じ。
 これは恋愛じゃない。交際地雷地帯でパルクールしてる状態よ」

「パルクール、例えがうますぎて逆に納得した自分がいる……!」

 先生はふうっとため息をついた。

「私は教師として、命に関わる風紀違反を見逃すつもりはないわ。
 だから……」

 パタン。

 風紀室のドアが閉まると同時に、先生が静かに言った。

「あなたを保護する」

「……はい?」

「このままじゃ、誰かが傷つく。……最悪、命も」

 黒沢先生は真剣な眼差しでこちらを見据えた。

「というわけで、あなたには“一時保護プログラム”を適用します」

「保護プログラム!? 学校にそんな制度あった!?」

「私の個人的な措置よ。……家に来なさい。逃げ場が必要なんでしょ?」

「え、家に……」

(えっ? えっ?)

「何、変なこと考えてるの?」

「いやっ、そんな、あの、先生の家とか……」

「“風紀的”には、私が管理してる方が全員納得でしょ?」

(納得される気がするのが悔しい!!)

 ◆ ◆ ◆

 こうして俺は──

 黒沢先生の家に“保護”されることになった。

 スタイリッシュな一人暮らしのマンション。
 高層階。大人の女性の香り。冷蔵庫には豆乳と高カカオチョコ。

「夕飯は食べた?」

「いや……逃げ続けてて……」

「じゃあ、何か作るわね。あ、台所には入らないで。男子禁制よ」

(なんで!?)

 ◆ ◆ ◆

 その夜。
 ようやく布団に入って目を閉じかけたそのとき──

 スマホに着信が走る。

 《あゆむ:弘弥お兄ちゃん、どこ……? 先生の家って、本当?》

 《りあ:GPS拾った。西棟エリアで合ってる?》

 《ルナ:センセーのとこに逃げるのはずるいぞコラ》

 《来栖ゆら:お姉さん先生って、殺してもOK?♡》

「先生ぃぃぃぃぃ!! 本当に保護されてる感じがしませんッッ!!」
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