同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三二六話 「朝の包囲網──ヒロインたちの尋問ラウンド」

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 朝。
 黒沢先生の家のベランダで、俺は洗濯バサミを持ったまま固まっていた。

 理由? 簡単だ。

 マンション前の歩道に──
 ルナ、りあ、あゆむ、そして中二病ヒロイン・瑠衣が、全員そろってこっちを見ていたからである。

 その視線の先にあるのは、俺が干していた一枚の――

 濡れたシーツ。

(バレた。完全に、察された)

 風がやさしく吹き抜ける中、俺は心の中で叫んだ。

(なんでよりによってこのタイミングなんだよおおおおお!?)

 ◆ ◆ ◆

 それから約一時間後。
 学校裏の中庭、“通称:第三避難所”にて。

「――で、弘弥。シーツの件について、詳しく聞かせてもらおうか」

 ルナが腕を組みながら、ニヤリと笑う。

(やっぱりこうなった!!)

「せ、先生の家で泊まったのは保護であって、別にやましいことは――!」

「“濡れた”シーツは、やましくないって言い切れるの?」

 りあが、甘く微笑んだ。

「濡れ方にもいろいろあるわよね。汗? 涙?……それとも、“快感の果て”?」

「やめてぇぇぇ!! そういう比喩やめてぇ!!」

 あゆむが、顔を近づけてくる。

「でも……弘弥お兄ちゃん、うっかり出ちゃったんでしょ?」

「な、なななななにをっ!!」

「だってシーツ洗ってたもん。私だって、お兄ちゃんの“出た後”の顔、知ってるよ」

「知ってるの!? 知ってるの!?!?」

「はい、ここで証拠提出」

 瑠衣が“観察記録ノート”を取り出し、眼鏡をクイッと上げた。

「午前六時二十三分。目覚めと同時に視線を足元に落とす挙動。
 その後、頭を抱えて天を仰ぎ、“またやったぁぁああ!”と叫んでいた。
 このことから、私の結論は――」

 バンッ!

 ノートを開いて指差す。

 《夢精》

「やめてえええええ!!! 記録やめてええええ!!」

 ◆ ◆ ◆

 さらに追い打ちをかけるように、
 ルナがポケットから何かを取り出す。

「これ見て。SNSの裏垢。“黒沢先生のマンション”ってタグ付けで、
『白いシーツ洗ってる男子』って目撃ツイート、拡散されてるよ~?」

「拡散ってなんだよぉおおお!!!」

「弘弥……あんた、絶賛バズってる」

 りあの言葉が、ズシリと重くのしかかる。

 そのとき、あゆむが静かに言った。

「……でも、私は許すよ」

「え?」

「夢精くらい、思春期男子なら当然だもん。
 だから、恥じなくていいよ。次は……私のベッドでやってくれたら、もっと嬉しい」

「うわぁああああああああああ!!!!」

「ふむ。では私も“呪われたシーツ”を提供しよう」

「やめて! 怖いからやめてぇぇぇ!!」

 ◆ ◆ ◆

 ヒロインたちの尋問は、昼休みまで続いた。

 汗は流れ、喉は枯れ、精神は摩耗。

(……俺、夢精ひとつでなんで人生ここまで追い込まれてるの?)

 だが――この悪夢は、まだ終わらない。

 放課後、保健室からの放送。

『真壁弘弥くん、黒沢先生が呼んでいます。職員室まで来てください』

(…………今度は先生から!?)

 俺の逃げ場、またひとつ失われた。
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