同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三二七話 「保健室指導──先生、なぜそんなに真顔なんですか」

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『真壁弘弥くん、黒沢先生が呼んでいます。職員室まで来てください』

 放課後、校内放送が響いた。

(やっぱり来た……夢精バレの“本命”が……!)

 俺はガクガクと震えながら、職員室へと足を運んだ。

 ガラリ。

「失礼します……」

「来たわね」

 待ち受けていたのは、スーツ姿に白衣を羽織った黒沢先生。
 眼鏡越しの視線は冷静沈着。だけど、どこか慈愛すら宿していた。

(今ならまだ謝れば情状酌量の余地が……!)

「先生、あの、昨日のことは本当に申し訳――」

「座って。話はそこからよ」

 ぴしゃり。

 俺はおとなしく椅子に腰を下ろした。

(……拷問かな?)

 ◆ ◆ ◆

「まず最初に。昨日の“事故”について」

「“事故”て!!」

「夢精は、誰にでも起こることです。
 思春期の男子にはごく一般的な、そして極めて健康な反応です」

「っっ!!」

(真顔で言うなあああああああ!!!)

「むしろ、あの頻度で起こっているということは――」

 先生は机の引き出しから、性教育用の保健プリントを取り出した。

 タイトル:
 《正しい性機能と自己管理のための基礎知識》

「……先生、それ出すんですか!?」

「重要だから。ほら、“自慰行為は恥ずべきことではありません”って赤字で書いてあるでしょ?」

「やめて! 真顔で“自慰”って言わないでええええ!!」

 ◆ ◆ ◆

「ちなみに真壁くん、最近ストレスとか、不規則な生活してる?」

「ラノベ連載とアニメ化とヒロインに追われてて寝不足です」

「それだわ」

 先生はメモ帳に“ストレス性過剰性欲 → 睡眠夢精頻発”と書いた。
 なんかもう、心が砕ける音がした。

「だから、これからは適切な頻度で発散することも大事なの」

「せ、先生……もしかして……そ、それを今ここで……」

「するわけないでしょ」

「ですよねぇぇええ!!!」

 ◆ ◆ ◆

「でもね、真壁くん。
 今のままだと、いずれヒロインたちの誰かが、**あなたの“処理係”になるわよ?」

「処理係って何!?」

「そうなる前に、“自己管理能力”を身につけて」

 先生は書類の山の中から、**“思春期男子のためのセルフケア記録表”**を取り出した。

「ちょっと待って!? なんでそんなもんあるんですか!? 教育委員会何やってんの!?」

「自分の回数と傾向を記録することで、理性を保つ訓練になるの。あと、身体のリズムも整えられるし」

「そういう冷静な理屈で説明しないでくださいぃぃぃぃ!」

「ちなみにこの表、去年の生徒会長も提出してたわよ?」

「先輩!?!? どんな風紀!?」

 ◆ ◆ ◆

 最終的に。

 俺は「思春期セルフケア学習課題」として、
 **自慰に関する読書感想文(800字)**と、
 **生活習慣の見直し日記(2週間分)**を課されることになった。

(もう俺の尊厳、原稿用紙のマス目に散ったよ……)

 帰り際。

「弘弥くん」

「……はい……」

「性ってね、大切なことなのよ。
 ふざけるものじゃないし、でも隠すものでもない。
 だから、自分でしっかり付き合っていくこと。わかった?」

「……はい、先生」

「よろしい。じゃあ今度、参考文献として“保健室推薦BL本”も紹介するわね」

「もう帰っていいですかァァァ!!?」
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