同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第三二八話 「帰宅──そして待ち受けるヒロインたちの尋問タイム 第二幕」

　夕焼けが町を染めていた。

　黒沢先生の真顔での“自慰は健康”講座を終え、
　心に深い傷を刻んだ俺・真壁弘弥は、
　フラフラと自宅の玄関を開けた。

「……ただいま……」

　靴を脱いでリビングのドアを開けた瞬間、
　空気が──張り詰めた。

「おかえりなさい、弘弥くん♡」

　笑顔のあゆむ。

「おかえり、弘弥」

　無表情のりあ。

「……帰ってきたな、被験者No.001」

　観察ノートを手にしたひより。

「おかえりっス～、我が性春の逃亡者ぁ～☆」

　テンション高めのルナ。

「……ふむ、闇の教師との交渉、どうだった？」

　マントをひるがえす瑠衣。

　そして。

「弘弥、おかえり。……本日も“記録案件”発生済みと見たわ」

　すみれが眼鏡を外して紅茶を差し出してきた。

（……なんで全員集合してるんだよ！？）

　◆　◆　◆

　俺はソファの真ん中に座らされていた。
　その周囲を囲むように、ヒロインたちが半円状に配置されている。

　“おかえりなさい尋問ラウンド”開幕。

「で？ 昨夜の“汚れたシーツ事件”について、詳しくどうぞ」

　トップバッター・すみれの口調が、いつになく鋭い。

「え、いや、それはですね……夢、見てて……その……無意識のうちに……」

「ふぅん。夢、ねぇ」

「どんな夢だったんですか？　記述、お願いします」

　ひよりが無慈悲にノートを差し出す。

「えぇぇぇぇ……」

「ねぇ弘弥、先生と一緒に寝てたんでしょ？」

　あゆむが膝に手を置いて、身を乗り出す。

「違うってば！ 客用ベッド！」

「でも、先生の家って独身女性の一人暮らしだよねぇ？」

　ルナが意地悪くニヤつく。

「冷蔵庫、開けてないよね？ アレ、恋人用アイスとか入ってるかもだし」

「そこ掘り下げないで！ 本当に寝ただけだから！」

　◆　◆　◆

「……で、“あのあと”どうだったの？」

　りあの声が低い。

「“保健指導”受けたって言ってたけど、何されたの？」

「え、あの、えっと……」

（言えるか！？ 真顔で“自慰は健康”って言われたとか、読書感想文書けって言われたとか！！）

「答えないってことは……やましいことがあったのね」

　りあの目がスッと細くなる。

「“排除対象”、更新完了っと」

「怖い怖い怖い怖い！！」

「ちなみに先生、弘弥くんのこと“保護する”って言ってたよね？」

　あゆむが甘い声で言う。

「……先生に“管理”されるのって、どうだった？」

「性的な意味じゃないからな！？」

「ふーん、じゃあさ」

　ルナが急に、背後から抱きついてくる。

「こっちは“性的な意味あり”で抱きついても、問題ない？」

「ないってば！！ あああ、誰か助けて！！」

　◆　◆　◆

　そしてついに、すみれが手にしていた紙を差し出す。

「はい、これ。今夜の“隣で寝るヒロイン”希望表よ」

「なにそのシステム！？」

「公平に、ね。誰かが独占しないように、くじ引きで。
　ちなみに今日の“夢精ブースト率”で言えば……全員興味津々だけど？」

「やめてくださいほんとにやめてください！！！」

　◆　◆　◆

　最終的に、俺は“ヒロインローテーション制度”のもと、
　一晩に2ヒロインずつ同衾交代制という、
　新たな地獄に突入することが決定された。

　そして就寝前、誰かがそっと耳元で囁いた。

「明日の朝、“また”したら、誰が処理するか、じゃんけんね♡」

「やめてえええええええ！！！」