同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三四四話 「読書の秋、俺は俺の理想を読む──ハーレムラノベと現実の境界線」

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──日曜日の昼下がり。
リビングの窓から差し込む陽射しはやわらかく、
空気もほどよく涼しく、眠気を誘う完璧な秋日和。

そして、そんな中で俺は――

「……ふっふっふ、読んでやるぜ……」

読書の秋、**ハーレムライトノベル読書会(ソロ)**を開催していた。

◆ ◆ ◆

手に取ったのは、最近話題の新刊。

タイトルは――

『俺の家に毎晩美少女がなぜか同衾してくる件(ただし全員合法)』

(うわぁ……タイトルからして既視感すごい)

しかし、読み進める手は止まらない。

なぜなら、冒頭のモノローグがこう始まるからだ。

「夢精の跡が毎朝見つかる。それは呪いか祝福か。
でも俺は、この“抜け出せないハーレム”に、案外、居心地の良さを感じていた――」

「パクリか!?」

◆ ◆ ◆

そこへ、トテトテと足音が。

「……あれ? 弘弥くん、何読んでるの?」

すみれがやってきて、俺の肩越しに本のタイトルを見た瞬間――

「……っ……こ、これ……私たちのことじゃない!?!?」

「ま、まぁまぁ……参考文献的な? 勉強の一環で……」

「“合法同衾ラノベ”で!?!?!?」

◆ ◆ ◆

「おぉー、なになに~? ハーレムラノベ? タイトル見せてー」

ルナが表紙を覗き込む。

「『同衾してくる件』って! え、それうちの状況そのままじゃん!!」

「弘弥、やっぱ“ハーレムに酔ってる説”あるよね?」

「酔ってねぇよ!?!?」

「“夢精が嬉しい系ヒロイン”ってのも出てくるの?」

「出てきたぁああああああ!!!」

◆ ◆ ◆

さらに、ひよりが黙って本を取り上げ、ぱらぱらとページをめくる。

「……登場ヒロイン属性、ギャル、お姉さん、幼なじみ、ヤンデレ、観察者、中二病……」

「……ねぇ弘弥、これは一体どういうこと?」

「偶然です!! 時代の空気です!! トレンドです!!」

「じゃあ、この“メイド服で追い打ちセリフ合戦”のシーンは?!」

「……それは……俺の願望です……」

◆ ◆ ◆

「ふーん、なるほどね~」

あゆむがニヤニヤしながら、俺の顔を覗き込む。

「“小説の中なら、好きなだけ選ばずに済む”もんね?」

「……ぐはぁっ……!!」

「“現実では誰かを選ばなきゃいけない”けど、
フィクションなら“全員がハッピー”にできる」

「……そういうことか、弘弥……」

「いやでも! でもっ!! ラノベってそういうものでしょ!?」

◆ ◆ ◆

りあが、そっと俺の隣に座ってきた。

「……どの子が好きなの?」

「え?」

「ラノベの中で、主人公が“本当に好きになったヒロイン”って、誰?」

「……それは……」

思わず黙ってしまった俺に、
りあはにっこり微笑んで囁いた。

「……現実でも、そうなるといいね」

「……こっわああああああ!!!」

◆ ◆ ◆

その後。

俺の読んでいたラノベは、
「全員で朗読劇」という形でヒロインたちに“音読”されることとなり、
全員が“自分がモデル”だと主張しながら、クライマックスの“同衾告白シーン”を再現しはじめた。

「ご主人様ぁ♡ 今夜も一緒に寝てくれますよね?」

「お兄ちゃん……今日も、いっぱい……して?」

「観察報告:勃起反応、確実に上昇中です」

「やめてええええええええ!!!」

読書の秋、ここに敗れる。
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