同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三五一話 「新たな推し?──こっそり開いた配信でまさかの俺の話」

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 ──事件は、静かな午後に起きた。

「ふぅ……少し気分転換でもするか……」

 VTuberスパチャバレ事件から数日。
 俺、真壁弘弥は、こっそり**“新規開拓”**に乗り出していた。

(……もう“ぽっぺちゃん”は封印だ。あんなにバレるなんて思ってなかった……
 次はもっとマイナーで、こっそり見られるタイプの子にしよう)

 そう、俺は反省していたのだ。
 そして、選んだのは……

 チャンネル名:「ことのは*ことね」
 フォロワー数は約3,000。
 新人VTuberっぽい、ほわほわ系癒しボイス。

「うん……これだ。この距離感、このローカル感……落ち着く……」

 ◆ ◆ ◆

【ライブ配信中】
「こんにちは、みんな~。ことねですっ。
 今日は、ちょっとだけ“尊い語り”の回……ふふっ」

 ことねちゃんの声は、ぽわんとしていて優しい。
 そして不思議と、耳に心地いい。

「みんなって、“天才作家”って聞いて、どんな人を想像する?
 私はね、すごく繊細で、変態で、ちょっと情けなくて、
 でも本気になると誰よりもかっこいい、そんな人だと思うの」

(へぇ……めっちゃわかってるな……)

「たとえば――“真壁弘弥”先生とか!」

「………………」

「………………へ?」

 ◆ ◆ ◆

 画面には――
 にっこり笑う、ことねちゃんのイラストアバター。

 その声は、まっすぐ俺のフルネームを呼んでいた。

「えっ、えっ、な、ななななんで!?!?!?」

 俺はあわてて音量を下げ、配信チャット欄を凝視。

 そこには……

【ことね推し1】
「また始まった! 先生語り!」
【ことね推し2】
「ガチ恋勢だよね~ww」
【ことね推し3】
「この前、ぽっぺちゃんの話も出してたよな」
【ことね】
「だって、“ぽっぺちゃんしか勝たん”ってスパチャしたの、弘弥先生だったでしょ~?
 もう、あれは事件だったね~♥」

「情報、拡散してるううううう!!!」

 ◆ ◆ ◆

 ことねちゃんは、続ける。

「でも、私、本気で思ってるの。
 先生みたいな人って、物語の中だけじゃなくて、
 “誰かのリアル”も救ってるって……」

「……え?」

「中学生の頃、友達がいなかった時期にね、
 真壁先生の“ヒロイン全員が報われる物語”読んで、
 本気で泣いちゃったの。
 “私はいていいんだ”って思えたの、あのときだけだったんだよ」

「………………」

(まさか……そんな子が、今VTuberになって……?)

「弘弥先生、聞いてるかわかんないけど――
 今度、“私をモデルにしたキャラ”も、いつか登場させてね?」

「お、おおおぉぉぉ……!?」

 ◆ ◆ ◆

 配信終了後。

 俺は、PCの前でしばらく動けなかった。

(ことのは*ことね……
 この子、マジで俺の作品のファン……なのか……?
 ていうか、なんでフルネーム知ってるの!?)

 そのとき、ドアの向こうから――

「お兄ちゃん、今“ことね”って聞こえたけど。
 まさかまた、VTuber配信見てたんじゃないよね?」

 碧純の声が、刺すように飛んできた。

「わわわっ! 違っ、違うからっ! これは……研究で……っ!!」

(俺の平和な秋、どこに行った……)
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