同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三七一話 「放送直前カウントダウン──ざわめくハーレムと緊張の夜」

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 ──その日は、朝からずっと落ち着かなかった。
 いや、正確にはここ数日、俺はずっと浮き足立っていた。

(ついに、今夜──俺の作品のアニメ第一話が放送される……!)

 高校二年生にしてアニメ原作者。
 なんて響きは、聞こえはいいが――

 実際のところ、プレッシャーは胃を破壊しにかかってくる。

「……緊張で死にそう……」

「ねぇ弘弥、何時から!? 放送って何時からなの!? もう録画した!?」

「えっ、何? 緊張してるの? 初夜の覚悟なの? 初夜!? 初夜ァ!?」

「落ち着いてルナ! 初夜じゃない!」

 俺の周りでは、ヒロインたちが勝手に盛り上がっていた。

 ◆ ◆ ◆

 午後6時、俺の家・リビング。

 ヒロインズ全員、なぜか泊まり込みの構えで続々と到着。
 すでに100インチのリビングシアター前は、特等席争奪戦の真っ只中だった。

「弘弥くんの左隣は私が!」

「いや、右隣が本命だよ。視線的に」

「どっちも私の席なんだけど?」

「私のひざの上が空いてますよ?」

「“お兄ちゃんの隣”は妹の義務!!」

「“夢精記録係”は常に心拍の近くにいたい」

 ……地獄かここは。

 ◆ ◆ ◆

「じゃあこうしよう。交代制にします」

「えー!?」

「納得できない!」

「一人30分で交代制。文句は受け付けません」

「弘弥くん、強気……♡」

「録画するから3回は観るよね? 3周すれば全員2回は隣座れるからいいよね?」

「何この地獄のローテーション制度……!」

 もはや俺の意思など関係なく、“ハーレム放送視聴会”が完成していった。

 ◆ ◆ ◆

 午後6時30分。

「お風呂済ませたー! すっぴん準備完了!」

「私はラノベ1巻とタオルと水、準備オーケー!」

「全員分のアイス並べたー! 食べる順はくじ引き!」

「私は“実況用サブアカ”作った。#弘弥アニメでタグ祭りするから」

「怖すぎるからSNS控えてください!?!?!?」

 ◆ ◆ ◆

 午後6時45分。

 胃薬を飲みながら、俺は思う。

(なんで“初放送”が、こんな公開処刑みたいな環境なんだ……)

 プレッシャーはMAX。
 汗は止まらず、喉はカラカラ。
 でも――

 ふと見ると、俺の隣には、笑ってるヒロインたちがいた。

「楽しみだね、弘弥くん」

「きっと、最高の夜になるよ♡」

「“作者”としてじゃなくて、“弘弥”として見ようね」

(……そっか)

(俺、ひとりじゃないんだな)

 ほんの少し、心が軽くなった――そのとき。

 画面に“あと15分”のカウントダウンが表示された。

「うわぁぁぁああああああ!!!やっぱり緊張するううう!!」

「ぎゃー!始まる始まる!!正座正座ァ!!」

「“推しキャラ”って私かな? どうかな!?♡」

「“推しのパンツ”が出るかもね♡」

「パンツ出るの!?!?!?」

 リビングが騒然とする中、
 俺の作品の“人生が変わる夜”が始まろうとしていた。
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