同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三八三話 「枕投げは戦争だ──夜の本気ラブコメ合戦」

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 旅館の大部屋。
 夕食のあと、風呂上がり。
 浴衣姿の男女数名がひしめくこの空間は、まさに火薬庫だった。

「修学旅行といえば! 枕投げでしょ!!」

「おぉおぉぉぉ! やるしかねぇぇ!!」

「おい、カバー外すな!おいっ!!中の羽根が飛ぶから!!」

 そんな中、**真壁弘弥という名の“モテすぎ爆弾”**を抱えたヒロインズは──

 それぞれ、静かに牙を剥いていた。

 ◆ ◆ ◆

「枕は戦争の道具じゃないって、言ったはずなんだけどな……」

 俺の叫びは虚しく、大乱戦が幕を開けた。

「おらぁぁぁ! 弘弥の布団に一番乗りぃぃぃ!!」

「おいルナ!! 不正スタートだぞ不正!!」

「ことね、配信カメラ回ってる!? それ回ってないよね!?」

「こっそり録ってないで参加しなよ……っ!」

「私は分析に徹する!“夢精誘発率の高い枕の当たり方”を収集して……!」

「やめろォォォォォォ!!!!科学すんなあああああ!!」

 ◆ ◆ ◆

 そして、事件は“あの子”の一言で起きた。

「ねえ、みんな。
 言ってなかったけど……私、“弘弥くんの作品のモデル”なんだよ」

 ことねが、ふっと静かに言った。

「えっ?」

 一瞬、空気が止まった。

「登場キャラの“推しVTuber風ヒロイン”。あれ、私なの。
 弘弥くん、最初から気づいてたんだよね?」

 その瞬間、ヒロインたちの目が、真壁弘弥を貫いた。

「……おい、どういうことだ弘弥」

「説明してくれる? 弘弥くん。私たちじゃなく、ことねを先にモデルにしてたってこと?」

「VTuber=あの娘=ことね=“最初のヒロイン”ってこと……?」

「いったい、誰が“正妻”なの?」

(ぎゃあああああああ!!! なんで今このタイミングでカミングアウトォォォ!?!?)

 ◆ ◆ ◆

 そのとき。
 騒然とする部屋の隅で、誰も気づかなかった。

 布団の影、薄暗い一角。
 そこにひとり、あゆむが潜んでいた。

(……私だって……)

 弘弥の横に敷かれた布団に、静かに身体を滑り込ませる。

(私だって、“一番最初の約束”を交わしたヒロインなんだから……)

 そして彼女は、弘弥の背中にそっと頬を寄せた。

(このまま……夢でもいい。少しだけ、近くにいたい……)

 ◆ ◆ ◆

 ヒロインたちの怒号が飛び交う中、
 主人公はひとり、何も知らずに布団へ転がり込んだ。

「うぅ……俺は悪くない……俺は何もしてない……」

 だがその背中に、かすかな体温。
 そして――柔らかな吐息が寄り添っていることに、まだ気づかない。

「ねえ弘弥くん、ほんとは誰が一番なの?」

「そうよ。答えて、今ここで」

「“枕投げ”は、もう終わった。
 これからは、“想いのぶつけ合い”だよ──」

 夜の戦場。
 それは笑いながら、本気の告白未遂ラッシュへと変貌していく。
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