同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三八二話 「奈良の鹿と修羅場と、狙われたおむつ袋」

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 修学旅行2日目、朝。
 旅館のチェックアウトを済ませた俺たちは、バスで一路――奈良へと移動していた。

「東大寺!大仏!そして鹿!」

「せんべいあげる系イベント、全力で参加しますっ!」

「鹿ってあれでしょ? 人間の“油断”を見逃さないって有名なやつ」

「まさかね~、野生動物に何か起こるなんてこと――」

 その油断が、あんな悲劇を招くなんて、
 この時の俺はまだ、知らなかった。

 ◆ ◆ ◆

 奈良公園。
 朝の空気は清々しく、観光客も多くない時間帯。
 鹿はのんびり草をはみ、班行動のクラスメイトたちは大仏前で記念写真を撮っていた。

「弘弥くん、鹿せんべい買った?」

「いや、俺は……あれちょっと怖いし……」

 俺の背中には、リュック。
 そしてその中には――“命の保証”が入っていた。

(昨日もなんとか乗り切った……だが、最終夜が本番。今日が勝負だ。だから俺は――)

【超吸収型ナイト用・大人の安心】

(これは……青春を守るための、最低限の防具……!!)

 だが、悲劇は起きた。

「弘弥ー! ちょっと飲み物買いに行こう!」

「え、でも荷物が……」

「大丈夫大丈夫、私が見てるってー♪」

 ルナのその一言を信じ、
 俺はリュックをベンチに置き、近くの自販機へ――

「──あれ? ねえ、ちょっと! そこの鹿さん!? 何食ってんの!?!?」

「ちょ、やめろ! それは……それだけは……!!」

 \ビリィッ……/

 “おむつ袋”が、見事に鹿に引き裂かれた。

 風に舞うパッケージ。
 そこに記された、無慈悲な文字列――

『超安心設計・夜間対応型大人用紙パンツ』

 時が止まった。

「えっ…………あれ……弘弥の……?」

「…………弘弥くん、それって……まさか……」

 クラス全員の視線が、俺の下半身に集まっていた。

「ちがぁぁああああああああああああああああああううううう!!!!!!」

 ◆ ◆ ◆

 数分後。

 俺は東大寺の陰にひっそりと避難していた。

「もう無理……人生終わった……死にたい……」

「大丈夫だよ弘弥。気にしなくていいって」

「それ私がカバーするから♡」

「夢精防止なら、私が一晩中起きて見守るよ?」

「ていうか、別にしちゃってもよくない?」

「ヒロイン全員がそう言うのやめて!俺の羞恥心がもたないの!!」

「弘弥お兄ちゃんが夢精するのは、成長の証なんだから、私は嬉しいよ?」

「それって……どういうことだよあゆむ!?」

「わたし、あの時の約束……“お嫁さんにする”って、まだ忘れてないから」

 \地雷、追加──!/

 ◆ ◆ ◆

 そして、その場に現れたのは――篠宮みつき(看護師/幼なじみ/地雷属性)。

「見たわよ。おむつ舞ってるの。あれ、すごかった」

「やめてええええええ!! もう掘り起こさないでえええ!!」

「青春の遺物が空を舞うって……文学的だよね♡」

「やめてその冷静ぶった分析!文学にしないで!!!」

 ◆ ◆ ◆

 その夜。

 旅館のロビーには、“ヒロイン緊急会議”の貼り紙があった。

『真壁弘弥の尊厳と、夢精支援体制について(本日20:30より)』

「誰が貼ったんだよこれ!!?」

「議題①:誰が今夜隣で寝るか」
「議題②:おむつは要るか、要らないか」
「議題③:それ以前に夢精は歓迎か否か」

「地獄か!? これは恋愛の名を借りた地獄なのか!!?」

 ◆ ◆ ◆

 そして、俺の部屋の襖が、音もなくすうっと開いた。

「こんばんは。今夜は“添い寝サポート”に来ました♡」

「やめてぇぇぇぇ!!!俺の心が擦り切れるぅぅぅぅ!!!!」

 青春と羞恥とおむつが混ざり合う、奈良の夜は更けていく。
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