同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四二五話 「レッドカーペットと“夢精の真意”スピーチ」

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 ロサンゼルスの空は、真っ赤に染まっていた。

 夕日がゆっくり沈むその瞬間、
 世界が、静かにひとつの“物語”を迎えようとしていた。

「弘弥、行こう」

「……ああ」

 俺たちは、リムジンの扉を開けた。

 目の前に広がるのは──
 世界最大級の映画プレミア会場。

 そして、赤く染められた絨毯。

 レッドカーペットだった。

 観客の歓声、カメラのフラッシュ、スターたちの微笑。

 だがその中心で、俺の心臓は、破裂寸前だった。

「ひっ、ひぃぃ……やっぱやめよう!?無理だよこれ!!」

「逃げんな」

「おむつしてるんでしょ!? だったら大丈夫じゃん!」

「違う、そうじゃない!!」

 隣に立つヒロインたちは、それぞれ華やかなドレス姿。

 すみれはシルバーのロングドレス。
 碧純は淡いブルーのミニドレス。
 ルナはギラついたスパンコールドレスでファンサ全開。
 ことねは和洋折衷のVTuber袴ドレス。
 あゆむは黒のワンピでしっかり地雷系。

 全員、俺の手をぎゅっと握っていた。

「大丈夫。弘弥は、私たちの誇りだから」

「“夢精”ってワードが世界飛び交ってるけど、誇りだから」

「もういっそ叫ぼう。“夢精ばんざい”って!」

「やめろォォォォォ!!」

 その時だった。

 会場を歩く中、外国人の記者から飛んだ言葉。

「Mr. Makabe! 'MUSEI'……Is it a symbol of Love?」

(夢精は、愛の比喩なのですか?)

 空気が止まった。

 マイクが差し出される。

 フラッシュが集まる。

 ヒロインたちが、静かに俺を見た。

 ……俺は、迷った末に、こう言った。

「Yes.」

「“夢精”は、愛の比喩です」

「それは、夜に誰かを想ってしまうほど、
 胸が苦しくて、
 言葉にできなくて、
 触れたくて、でも触れられなくて──」

「だから、心と体が勝手に動いてしまった証拠なんです」

「僕はそれを、青春の爆発って呼んでます」

「そして──誰かを真剣に好きになった“初めての証”だと、信じてます」

「だから、恥ずかしくなんかないんです」

 ……沈黙。

 フラッシュが、止まる。

 カメラも、静止したようだった。

 やばい、これやばい、凍った!? 俺、やらかした!?!?

 だが次の瞬間──

「ブラボー!!」

 どこからともなく響いたその声に、

 拍手が、どっと湧いた。

 観客席から。スタッフから。
 なんなら後ろで待機してたカメラマンたちまで。

 会場全体が、スタンディング・オベーションに包まれていた。

「弘弥……言ったね……」

「世界に、“私たちの夜”を……」

「うん……伝わった……」

 ──そして、上映が始まった。

 巨大なスクリーンに映し出される、“夜の少年”の物語。

 戦い、悩み、恋をして、
 ベッドの中で世界を変える、物語。

 そこにいたのは、俺が描いた“誰か”じゃない。

 俺自身だった。

 上映が終わった瞬間、
 再び会場に、割れんばかりの拍手が響き渡った。

 映画は、終わらない。
 “夜”の物語は、まだ続いている。

 そしてその夜、
 “夢精”という言葉が、初めて“誇り”として受け止められたのだった。

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