同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四四一話 「思い出の足元──“誰かの靴下”に救われた日」

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 ──夜。執筆用のデスクで、俺は一つの記憶を見つめていた。

 画面には、新作の一文。

『君の靴下が、僕を救った──あの日、僕は確かに立ち上がれたんだ』

(……まさか、このテーマで、こんなに“書きたくなる”とはな)

 傍から見たら、ただの“靴下フェチ小説”。

 でも俺にとって、それは違う。

 あの日の“あれ”は、単なるフェチなんかじゃない。

 ──あれは、命綱だった。

 ◆ ◆ ◆

「中学の頃、いじめられてた時期があったんだ」

 リビングに集まっていたヒロインたちの前で、俺はぽつりと話し始めた。

「毎日、靴を隠されたり、下駄箱を荒らされたりしてさ。 朝からブルーな気分で、教室に行くのもつらくて──」

 ことね:「……弘弥くん……」

「でも、ある日」

 俺は、ふっと笑う。

「下駄箱に、そっと靴下が置いてあったんだ。白くて、柔らかくて、ふわっと香ってて。 手紙も名前も何もなかったけど、洗濯されてて、きれいで、ぬくもりが残ってた」

 すみれ:「……!」

「それがさ──ものすごく、安心したんだ」

「“誰かが見てくれてたんだな”って思えた。 それだけで、翌日からの地獄に、ほんの少しだけ立ち向かう気力が湧いたんだよ」

 ルナ:「弘弥……」

「靴下って、普通は足を包むもんだろ。 でもあの日の“あれ”は、俺の心を包んでくれたんだ」

 ◆ ◆ ◆

 沈黙。

 その場にいた全員が、わずかに硬直していた。

 が──

「……それ、もしかしてわたしかも」

「ちょっ、待って!私かもしれない!!」

「いいえ、私ですっ!」

「わたしだってば!」

 \\\ 修羅場・再来 ///

 ◆ ◆ ◆

 すみれ:「私、小学校の時からずっと弘弥くんのこと見てたし……洗濯の手伝いもしてたし……」

 碧純:「違うよ! 弘弥のことが心配で、こっそり中学の靴箱まで様子見に行ってたんだから!」

 ルナ:「いやいや! あたし、その頃すでにギャルだったし、“励ましソックス”配るの流行ってたもん!」

 ことね:「デビュー前の活動範囲、ちょうどその中学区に該当してます。可能性ありです」

 あゆむ:「ふふふ……本当に知らないんですか? お兄ちゃん……♡」

 弘弥:「え? こわっ!!」

 ◆ ◆ ◆

「じゃあ、本人にしか分からないような情報、出してみようよ!」

「うん、置いたのは右足だけだったとか!」

「いや私は両足セットでピンクのリボン付きだった!」

「わたしは匂いでわかってほしいって願いながら置いたよ!」

「それもう完全に嗅がせにきてるじゃん!!」

(なんだこの“告白×靴下×自白大会”!?)

 ◆ ◆ ◆

「弘弥くん……どの“香り”が、記憶に近い?」

 すみれが、そっと聞いた。

 弘弥:「う……うーん……」

(ちょっと待て。これ、“夢精の回数”で誰が一番か決めるより難問じゃね……!?)

 ◆ ◆ ◆

「──もう、みんなで一足ずつ、履かせて試すしかないね♡」

 ルナのその一言で、

「やめろおおおおおおおお!!!!!」
 再び修羅場は深夜にまで及んだ──。

 ◆ ◆ ◆

【翌朝】

 美月編集が、ポストに届いていた一通の封筒を手に部屋へやってくる。

「弘弥くん、あなたに“この手紙”が届いてたわ」

 封筒には、差出人不明。

 だが中には、ひとことだけ。

『あの靴下、君が拾ってくれて嬉しかったよ。』

 弘弥:「えっ……!」

 差出人の名はなかった。

 だが、ほのかに残る柔軟剤の香りが──懐かしかった。

(……まさか……本当に、誰だったんだ……?)

 物語はまだ、足元から始まったばかりだ──。

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