同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第四五二話 「カップとカップがぶつかる音──胸囲の情報戦」

　──それは、ノートの一言から始まった。

『ブラは理性を揺らす。』

　弘弥は、自室のデスクで頭を抱えていた。

「……いや、俺は真剣に“恋と支え”を描こうとしてるんだってば！」

　だが──

「このブラ、どう思う？ バストトップにレース入ってるの、意外とフィット感あってさ」

「待って、そういう話じゃ……って、なにそのレポート！？」

「“取材資料”です♡」と、ことねがノートパソコンを弘弥の顔面に突き出す。

　画面にはタイトルがでかでかと表示されていた。

『VTuberが一週間着用した恋と情熱のブラ日記♡』

「なんで日記にする必要があった！？」

「だってさ、弘弥くん、“恋と包容”がテーマなんでしょ？　だったらブラジャーこそ最前線！」

「まさかとは思うけど、配信とかしてないよね？」

「うっかり、朗読配信しちゃった♡」

「うっかりで済む話じゃないから！！」

　◆　◆　◆

【#支え愛論】
【#ブラジャー文学】
【#恋するカップサイズ】

　トレンドは地鳴りのように上昇していた。

　事態を知った他のヒロインたちも、当然のように参戦してくる。

「ふむ……ことねさんのそれ、総レースですね。では、私は“フィット重視”で勝負しましょう」

　すみれが、ブラジャーに関する詳細な構造図と共に提出したのは──

『着用感レポート：サイドボーンの有無と愛の安定性について』

「愛の安定性ってなに！？」

「支えるだけではだめなんです。“ズレない想い”こそが大事だと、私は思います」

　そしてあゆむ。

「わたしは、谷間です♡」

「言い切った！！谷間を制する者は恋を制すって何！？」

「だって……あのとき弘弥くん、視線、落ちてましたよね？ふふふ♡」

「記憶の中の俺、視線管理ガバガバすぎない！？」

　碧純は当然、黙っていない。

「私のは、すでに一緒に洗濯済みです！」

「いや、既成事実みたいに言うなよ！！」

「ほら、この“干したあとの香り”が愛の象徴……って思いません？」

　りあ：「記憶にも、香りにも、刻んでほしいのはわたしです」

　弘弥：「怖い怖い怖い！急に空気変わるのやめて！」

　◆　◆　◆

　その夜、弘弥の枕元には“ヒロイン別ブラジャー取材資料”が積まれていた。

　・着用日数記録
　・素材レポート
　・心理的満足度グラフ

「俺、ほんとにこれ書いていいのか……？」

　そう呟きながら、彼は再びノートを開いた。

　ページの余白に、ぽつりと書き足す。

『支え合うという行為は、ただの機能じゃない。
　心と心の“輪郭”を整える、優しい力だ。』

　そして──物語はまた一歩、深みに踏み込んでいく。