同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
466 / 630

第四五九話『お兄ちゃんの“好きな素材”で争う会──レース、コットン、それとも…?』

しおりを挟む
 朝の食卓。目玉焼きの焼き加減は完璧。味噌汁の出汁も効いている。
 だが、空気は最悪だった。

 ヒロイン全員が、俺・真壁弘弥に対して、どこか“探るような目”を向けている。
 理由は……まあ、分かっている。昨夜の『ナイトブラ騒動』の余韻が、まだ続いているのだ。

「……で、弘弥くん」
 一番に口を開いたのは、クール系美人のすみれだった。

「はい……」

「あなた、“触り心地”って、意識したことある?」

 盛大に、味噌汁を噴きそうになった。

「な、ななな、何の話かな!? 朝食だよね!? 今これ、完全に朝食タイムだよね!?」

 俺の狼狽を無視して、すみれは小さく微笑む。

「布の話よ。ブラの、素材の話」

「そう、素材!」

 待ってましたと言わんばかりに、ルナが身を乗り出してくる。

「私はねー、断然レース派! ちょっとチクチクするけど、それがまた“女の子してる感”あっていいんだよね~」

「私はコットンが好きです」
 すっと手を挙げたのはひより。
「柔らかくて、肌に優しくて、寝るときも違和感ない。しかも、実験データによると男性の好感度も高いんです」

「えっ、データ取ったの!?」

「はい。被験者五十名のうち、三十六名が“コットン系素材の下着を好ましい”と回答しました」

「そんなガチな統計いる!?」

 その時、碧純が咳払いをした。

「……ちなみに、私はシルク」

「シ、シルク?」

「大人っぽいから。あと、ちょっと贅沢な感じがして……なんか、特別な気分になる」

 そう言いながら、碧純は湯飲みに口をつける。その頬が、少しだけ赤い。

 ……なんか、可愛いぞ。

「じゃあ、ことねは?」

 全員の視線が集中する。

 ことねは一瞬沈黙し、静かに口を開いた。

「……鎖」

「素材じゃねぇ!!」

「見た目はレース、内側に“拘束感”がある設計。触れれば分かる。甘さと、罰の境界」

「やっぱり素材じゃねぇぇぇぇぇ!!」

 話題は完全にカオスと化していた。が、ここで終わらないのが“正妻戦争”である。

「でさ、弘弥は、どれが好きなの?」

 ルナが、無邪気な顔で問うた。
 その瞬間、空気が止まる。

 すみれの手がピクリと動いた。
 ひよりが観察ノートを開く。
 碧純が箸を止め、ちらりと視線を送ってくる。
 ことねは……なぜか手元に小鎖を取り出していた。

「え、いや、あの……そ、それはさ、あの……」

「答えろ、お兄ちゃん」

 碧純の声が低い。
 このプレッシャー、まるで裁判。俺は今、“布の好み”で人生の分岐点に立たされている。

「……おれは……」

 ごくりと唾を飲み込む。

「柔らかいやつ、がいいです……」

 全員が動きを止める。

「柔らかいって……つまり?」

「たぶん……コットン……?」

 ひよりの目が光った。
「勝利。記録します」

「ちょ、待てやああああああああ!!!」

 ルナが椅子から立ち上がった。

「今の不公平だよ! だって“触って確かめたわけじゃない”じゃん!」

「触らせる気かぁ!?」

「だったら比べようよ、実際に! この中で、一番“触り心地がいいのは誰か”!」

「だめだってばあああああああ!!」

「いいのよ」
 なぜか静かに口を開いたのは、すみれだった。
「それくらいで、気が済むなら……」

「なんで乗るの!? 冷静系ヒロインでしょ!?」

「……弘弥くんが、私のを“気持ちいい”って思ってくれるなら、少しだけ……」

「だからなんでそんな本気出してくるのぉぉぉ!?」

 結果、その日。
 俺は目隠しをされた状態で、手触りだけで素材を当てるという謎イベントに強制参加させられた。

 手のひらの感触だけで、誰の素材かを当てる。

 温度、繊維、弾力。
 そのすべてが、俺の脳に刻み込まれていく。

 そして、分かってしまうのだ。

(……やばい、分かる。分かるぞ、これ)

 結果発表。

 1位:ひより(コットン)
 2位:すみれ(シルク)
 3位:碧純(混合)
 4位:ルナ(レース)
 特別枠:ことね(鉄製)

 俺はなぜか、その夜もまた床で正座していた。

 そして、その背後から、ことねの声がする。

「……私のが一番、印象に残ったでしょ」

 うん、怖さで。

「布の感触だけで、ここまで命を削るとは思わなかった……」

 俺は天井を見上げて呟いた。

 そしてその夜。
 夢の中で、俺は無限の布地に囲まれ、うなされることになる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...