同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
472 / 630

第四六五話『パンチラとドキドキと、胃薬ください』

しおりを挟む
 春の柔らかな日差しが、つくばの自然公園を優しく包んでいた。
 木々は芽吹き、芝は青々と茂り、空には雲ひとつない青が広がっている。

 そしてその真ん中。敷かれたレジャーシートの上で、俺は、

 ──絶望していた。

 風は心地よく、空気は澄んでいる。
 ヒロインたちは皆、明るく笑い、楽しげにお弁当を並べていた。

 だが。

 そのスカートは、
 恐ろしいまでの軽やかさで、風に舞っていた。

 ピクニックに出発する直前、ルナが口にした言葉が脳裏に蘇る。

『今日のドレスコードは、自由な発想で♥』

 その意味を、この場に来てようやく痛感した。

(まさか……今日、全員、ノーパン──!?)

 芝生に座ろうとした瞬間、俺の肩にふっと乗る気配。
 振り返れば、そこにはルナが屈み、耳元で囁く。

「座るとき、注意してね」

 耳元に吹きかけられた息の温かさと共に、
 全身に警報が走った。

(今の意味は、そういうことだよな!? 見えちゃう可能性の話だよな!?)

 俺は震える手でシートに正座を決める。
 どんなに足がしびれようとも、これはもう精神修行の域だった。

 そこへ、観察系ヒロイン・ひよりがのぞき込んでくる。

「ここからのアングル、観察記録として最高です」

「観察すなぁぁぁぁああああああ!!!」

 続いて、ことねがスカートの裾を無造作に撫でながら、無表情で言い放つ。

「“見えてる”けど、“見せてない”。それが美学」

「そんな美学、俺の理性が死ぬぅぅぅぅぅ!!」

 スカートのひらめき、太ももの白さ、風に舞う布の軌跡。
 俺はそのすべてを“見ていないようで、見てしまっている”状態にあった。

 その葛藤が、脳に多大な負荷を与えていた。

 額に汗が滲む。
 こめかみがズキズキと痛む。
 心拍数は上がり、視界がゆっくりと傾いていく。

 ──もう、だめだ。

「うっ……」

 芝生が揺れ、空が歪み、音が遠のいた。

 ドサッ。

 俺の身体は、静かにシートの上へ崩れ落ちた。

「お兄ちゃん!?」「弘弥くん!?」「意識が……!」

 騒ぐヒロインたちの声も、もう遠い。
 次に目を開けた時、そこは救急車の中だった。

 搬送先の病院で、俺は仰向けのまま、点滴を受けていた。
 カーテン越しに響く足音。医師の登場だ。

 白衣の医師はカルテを覗き込み、しばし沈黙した後――

「……ふむ。診断結果が出ました」

 俺はぼんやりと目を開け、医師の言葉を待つ。

「急性“布不足性眩暈症候群”ですね」

「ぶ、布不足……?」

「ええ、要は“見えそうで見えない布地”に囲まれ、視覚的ストレスが限界を超えた状態です」

「そんな病名、あるかあああああああああ!!!」

 天井を見つめながら、俺は叫んだ。

 そして隣のカーテン越しから聞こえる声。

「布がないだけでここまで倒れるなんて……やっぱり布って偉大ね」

 ルナの声だった。

「次回は、もっと“透け感”重視でいこっか♪」

「頼むから、もう、布を大事にしてぇぇぇぇぇ!!」

 俺の理性は、春風の中で散っていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...