同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四八三話『体臭の距離が、心の距離に変わるまで』

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 湯庵つくばの休憩スペース。
 湯上がりのまま、俺たちはソファに腰掛けていた。

 ミレーヌは、金銀色のふわふわした髪をまだ少し湿らせながら、隣にちょこんと座っている。

 ローブ姿の彼女からは、ほんのりと優しい石鹸とハーブの香りが漂っていた。

 以前のような、強烈な体臭はもうない。
 代わりにあるのは、心地よいぬくもりと、柔らかな気配だけだった。

 静かな時間。
 周囲のヒロインたち──碧純、すみれ、ルナ、ひより、ことね──も、今だけは静かに見守ってくれている。

 ミレーヌは、モジモジと手を膝の上でいじりながら、ちらちらと俺の顔をうかがっていた。

 何か、言いたそうだった。

「どうした?」

 俺が声をかけると、ミレーヌは小さく深呼吸して、
 真っ赤な顔のまま、ぽつりと呟いた。

「……今度は、もっと……近づいても、いいですか?」

 その声は、かすれるように小さくて。
 けれど、俺の胸に、まっすぐに響いた。

 俺は、ふわっと笑った。

 この子は、こんなにも一生懸命で、
 こんなにも不器用で、
 それでも、まっすぐ俺に近づこうとしてくれる。

 そんな彼女を、拒む理由なんてない。

「うん」

 迷いなく、俺は頷いた。

 ミレーヌの顔が、ぱあっと輝いた。

 まるで、春の日差しのように、あたたかい笑顔だった。

 彼女はそっと、俺の隣に体を寄せた。
 肩と肩が、ほんの少しだけ触れる。

 ドキドキするほど近いのに、
 不思議と、嫌な感じは全くなかった。

 それどころか、心が、すとんと落ち着いた。

 かつては体臭の壁だった距離が、
 今は、心の距離へと変わっていた。

 香りだけじゃない。
 肌触りだけじゃない。

 ここには、確かなぬくもりと、信頼があった。

「……あの、弘弥様」

 ミレーヌが、そっと囁いた。

「わたくし、これからもっと、たくさんのことを学びます。
 だから……だから、ずっと、そばにいてくださいませね」

 その言葉に、俺は頷いた。

「もちろんだよ」

 彼女の手を、そっと握る。

 ミレーヌも、小さな手でぎゅっと握り返してきた。

 こうして、俺たちはまた一歩、心の距離を縮めたのだった。

 遠くで、ヒロインたちがそわそわと集まっているのが見えたが──
 今だけは、気にしないことにした。

 この優しい時間を、大切に抱きしめながら──
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