同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四九九話『過去も今も、全部抱きしめたい』

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 初回撮影が終わった後の控え室。

 スタッフたちも片付けに追われ、
 喧噪が少しずつ引いていく中──

 俺と紗凪は、二人だけ、ぽつんと取り残された。

 空気が、妙に静かだ。

 カメラも、マイクも、誰の目もない。

 ただ、俺と、紗凪だけ。

 紗凪が、そっと歩み寄ってきた。

 制服姿のまま、
 少しだけ照れくさそうに、

 でも、真っ直ぐに俺を見上げた。

「……ありがとう」

 その声は、かすれていたけど、
 確かに震えていなかった。

「弘弥のおかげで……ここまで、来られた」

 俺は、何も言えなかった。

 言葉にできないくらい、

 胸の奥が、いっぱいだったからだ。

 だから、代わりに、

 俺も、歩み寄った。

 そして、

「もう一度、ちゃんと……向き合いたい」

 そう告げた。

 紗凪の目が、大きく見開かれた。

 そして、

 ふわりと、

 彼女は、泣きそうな笑顔で、微笑んだ。

 本当に、久しぶりに見る、

 幼いころのままの、

 あったかい、紗凪の笑顔だった。

 これから、また、

 少しずつ積み重ねていこう。

 失った時間も、

 今から作ればいい。

 そう思った──その時だった。

 バンッ!!

 控え室のドアが、乱暴に開いた。

「はっけーん!!!」

 ルナが、息を切らして突入してきた。

「兄、こんなとこでイチャついてんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

 碧純がタックルをかましてきた。

「……控室は公共の場だよ」
 すみれが冷静に突っ込み、

「観察対象、恋愛進捗度急上昇」
 ひよりが記録を取り、

「黄金の刻、今、再燃す──」
 ことねが詠唱し、

 そして、

「弘弥様……わたくしも、負けません!!」

 ミレーヌが、涙目で叫んだ。

 俺と紗凪、唖然。

 ヒロインズ、全員、臨戦態勢。

「次は、こっちが本番だからね!!」

 ルナが高らかに宣言する。

「兄を、絶対守り抜く!!」

 碧純が拳を握る。

「観察対象、争奪戦、開幕」

 ひよりが冷静に記録する。

「黄金の正妻戦、運命の交錯──」

 ことねが謎ポエムを唱える。

「わたくしも、弘弥様と……一緒に……!」

 ミレーヌが真っ赤な顔で続く。

 俺は、

 静かに、目を閉じた。

 ──平穏な日常は、
 またしても、遠ざかっていく。

 でも、

 これが俺の日常なんだ。

 そして、これからも、

 きっと、賑やかで、
 うるさくて、
 でも、誰よりも温かい日々が、待っている。
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