同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第五〇〇話(特別閑話)『──この世界で一番見られたくなかったものを、見られた日。』

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それは、本当にただの、平凡な春の夜だった。

 仕事も、ドタバタも、一段落して。

 久々に、一人きりの静かな時間。

 ──だから、つい、気が緩んだんだ。

 ベッドに寝転がり、スマホを片手に、
 お気に入りの画像フォルダを、指先でめくる。

 可愛い二次元の女の子たち。

 誰にも見られない。

 ドアはちゃんと閉まってる。

 ヒロインズは、リビングでテレビを見てるはず。

 ──完璧な、孤独の時間。

 俺は、

 何も考えずに、

 自然に、

 その行為に手を伸ばしてしまった。

 無防備すぎた。

 ……そして、運命の数分後。

 ──カチャ。

 ドアノブが、回った。

 思考が、止まった。

 ギィ、とドアが開き、

 その隙間から、

 ルナ、碧純、すみれ、ひより、ミレーヌ、ことね──
 全員の顔が、覗き込んできた。

 時間が、静止した。

 俺は、ズボンを膝まで下げたまま、
 片手を、明らかに『現行犯』の状態で固まった。

 ヒロインたちも、固まった。

 ──本当に、空気が、止まった。

「…………」

「…………」

 無音。

 誰も何も言わない。

 ただ、

 絶望だけが、そこにあった。

 俺は、
 もう、何もできなかった。

 そっと、
 布団を引き上げ、
 顔を隠した。

 けれど、現実は、

 そこにあり続けた。

 震える声で、最初に口を開いたのは、碧純だった。

「……兄、なに、して……」

 声が、震えていた。

 ルナが、どうにか声を絞り出す。

「……や、やば……これ……マジで、事故……っ」

 すみれは顔を覆い、

 ひよりは、いつも通り冷静な顔をしていたが、耳だけ真っ赤だった。

 ことねは、何か呟きかけたが、声にならなかった。

 ミレーヌは、顔を真っ赤にして、ただ小刻みに震えていた。

 その場には、

 ただ、

 最悪の気まずさだけが、

 支配していた。

 そして。

「兄、最低だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 碧純の絶叫と共に、
 地獄の釜の蓋が、開いた。

「兄、死ねぇぇぇぇ!!!」

「うわあああああ、マジで、マジで、マジで!!! 見たくなかったぁぁぁぁ!!!」

「兄の、そういうの、いらないっ!!! いらないっっ!!!」

 枕が飛んだ。

 座布団が飛んだ。

 ぬいぐるみが飛んだ。

 俺は、布団の中で丸まりながら、

 ただ、

 耐えた。

 すべてを、

 無に帰す覚悟で。

 しかし、

 ここで終わらなかった。

 ルナが、泣き笑いしながら叫んだ。

「でも……でもさ……!
 つまり!!!」

「兄、性欲あるってことだよね!? 生きてるってことだよね!?」

「……元気なのは、いいことだよ、たぶん」
 すみれが涙目でフォローを入れる。

「観察対象、繁殖本能確認」
 ひよりが冷酷な記録を取る。

「……性とは、命の祝福」
 ことねが謎ポエムを唱え始める。

「わたくし、ど、どうしたら……」
 ミレーヌは混乱しながら、顔を真っ赤にしていた。

 結局。

 全員、

 何をどうしていいか、わからないまま──

 ただ、

 顔を真っ赤にして、

 俺を取り囲んでいた。

 そして、

 ルナが、
 バシッと手を叩いて言った。

「──よし!!」

「兄の“欲望”、受け止めた!!」

「つまり、戦争だ!!!」

「兄を奪い合う、正妻戦争の、開始だぁぁぁぁ!!」

 碧純が叫び、

 すみれが呆れた顔でため息をつき、

 ひよりが静かに記録し、

 ことねが詠唱し、

 ミレーヌが顔を真っ赤にして震えた。

 俺は、

 静かに、

 心の中で叫んだ。

(──誰か、今すぐ、俺を殺してくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)

 こうして、

 第500話、

 世界で一番見られたくなかったものを見られた俺は──

 正妻戦争、本格勃発という地獄へと、

 投げ込まれるのだった。
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