同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第五〇六話『ヒロイン大喧嘩──正妻ポジション争奪バトル』

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 ──リビング。

 昨夜の寝言騒動から一夜明けても、

 場の空気は、

 最悪に近い。

「……もう、わかんない! 誰か確定できないなら……勝負で決めるしかない!!」

 ルナが叫んだ。

「そうだ! 実力で正妻ポジションを奪うんだ!」

 碧純が拳を握る。

「建設的な案ですね」

 すみれが静かに微笑んだ。

「観察対象、勝者判定開始」

 ひよりが記録ノートを用意する。

「黄金の正妃、今ここに決まる──」

 ことねが謎ポエムを唱える。

「……わ、わたくしも、全力を尽くします……!」

 ミレーヌが顔を真っ赤にしながら拳を握る。

「ふふ、これも運命の選定……楽しみですわ」

 エレノアが微笑む。

「…………」

 紗凪は、

 小さく、

 頷いた。

「──では!」

 ルナが指を鳴らす。

「第一種目! 手作り弁当対決!!」

 ◆

 台所が、

 地獄の戦場と化した。

「これでも私は料理得意なんだからな!!」

 ルナが豪快に卵を割る。

「家庭的スキルで兄を落とす!!」

 碧純が鍋を振る。

「栄養バランス重視でいきます」

 すみれが落ち着いて盛り付ける。

「観察対象好物リスト反映中」

 ひよりが無表情でミートボールを並べる。

「黄金のランチボックス──開闢」

 ことねが謎の料理を生成する。

「し、失敗しないで……失敗しないで……!」

 ミレーヌが震えながらおにぎりを握る。

「王族の威信にかけて、美を極めますわ」

 エレノアが芸術品のような弁当を作る。

 ──そして、

 完成した各自の弁当を、

 弘弥の前にずらりと並べた。

「さあ! 選んで!」

 ルナが目を輝かせる。

「お、俺……?」

 戸惑う俺。

 だが、

 逃げ場はなかった。

 震える手で、

 ひと口、

 またひと口と、

 全員の弁当を食べていく。

(……う、うまい……)

(でも、プレッシャーが……胃に……っ)

 胃の奥が、

 きゅうううううっと締め付けられていく。

「第二種目! 好きな仕草当てクイズ!」

 ルナが叫んだ。

「えええええ!!?」

「兄が女の子にされて一番キュンとくる仕草、絶対当てる!!」

 碧純が目を光らせる。

「学術的興味が湧きますね」

 すみれが冷静に言う。

「データ、想定パターン20種以上」

 ひよりがメモを取り続ける。

「黄金の仕草──探求開始」

 ことねが再び謎詠唱。

「が、頑張ります……!」

 ミレーヌが震えながら決意する。

「ふふ、弘弥様の好み……掌握いたしますわ」

 エレノアが不敵に笑う。



 ──そして、

 各自が好き勝手に仕草を披露し始めた。

 髪をかきあげるルナ。

 袖をくいっと引っ張る碧純。

 眼鏡を外して微笑むすみれ。

 無表情で手を握るひより。

 なぜか膝枕を始めることね。

 緊張で涙目になりながら手を差し出すミレーヌ。

 完璧な淑女の所作を披露するエレノア。

(……た、たすけて)

 本気で、

 誰かに、

 助けを求めたかった。



 ──そして、

「第三種目! 想い出バトル!!」

 なぜか、

 記憶対決にまで突入した。

「あのとき、兄が熱出したとき、私が看病したんだからな!!」

「お弁当届けたの、私!!」

「初めてのサイン会、こっそり応援に行ったのは私!」

「初めての夢精観測データ、私がまとめた!」

「黄金の初恋記録──わたくしが編纂!」

「初めてのクッキー、わたくしが焼きましたのよ!」

「……弘弥と、最初に手をつないだの、私」

 それぞれの想い出が、

 ぶつかり合う。

 情熱のぶつかり合いに、

 リビングの温度が、

 どんどん上がっていく。

 そして。

「うっ……」

 俺は、

 ついに、

 胃を押さえた。

 きりきりと、

 胃が痛む。

 冷や汗が、滝のように流れる。

 全身の力が、抜けた。

「──弘弥!?」

 誰かが叫ぶ声を、

 遠くに聞きながら、

 俺は、

 静かに、

 リビングの床に、

 倒れた。

 ──正妻戦争、

 未だ収まらず。
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