同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第五〇五話『名前を呼んだのは誰──寝言修羅場』

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 ──夜。

 リビングは、修羅場の匂いが漂い始めていた。

 きっかけは、

 俺の──

 たった一言の、寝言だった。

 皆が夜這い作戦を敢行して、

 俺の無防備な寝顔に撃沈していったあの夜。

 そのとき、

 俺は、

 ──呟いてしまったのだ。

「……好きだよ、○○……」

 名前を、

 はっきりと。

 はっきりと。

 ──聞こえる声で、

 呟いてしまったのだ。

 結果。

 リビングには、

 地獄のような沈黙が落ちた。

「…………」

「…………」

 全員、

 硬直。

 そして。

 次の瞬間、

「──今、誰の名前って言ったァァァァァ!?」

 ルナが、

 顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「落ち着けルナ!」

 すみれが必死で制止するが、

 無理だった。

「聞き間違いだって、な?」

 碧純が震える声で言う。

「録音、完了しています」

 ひよりが、スマホを掲げた。

「黄金の証拠──逃れられぬ運命」

 ことねが詠唱する。

「わ、わたくし……っ、心臓が破裂しそうです……!」

 ミレーヌが抱きしめたクッションをぎゅうぎゅうに潰していた。

「ふふ、さて……どなたの名前でしょう?」

 エレノアが優雅に笑ったが、目は笑っていなかった。

「…………」

 紗凪は、

 ただ、

 俯いていた。

 唇を、

 きゅっと噛み締めていた。



 ──そして、

 推理大会が始まった。

「今のイントネーション、私っぽくなかった!?」

 ルナが真っ先に主張した。

「いや、普通に考えて、兄が好きって言うのは家族枠、つまり私!!」

 碧純も食い下がった。

「落ち着いて。まず音声分析をしましょう」

 すみれが、冷静に進行役に回った。

「サンプル音声、解析中」

 ひよりがスマホを操作している。

「黄金の耳により、すべてを聞き分ける……!」

 ことねがまた謎ポエムを唱えた。

 ミレーヌは、震えながら「わ、わたくし、そんな……でも、でも……!」と半泣き状態。

 エレノアは微笑んだまま「……どちらにせよ、決着はすぐに」と静かに煮えたぎっていた。

 そして、

 紗凪は、

 俯いたまま、

 何も言わなかった。



 ──推理は、ますます混迷を極めた。

「語尾の音が柔らかかった! ってことは、すみれか!?」

「いや、甘えた感じだった!! ルナだ!!」

「いやいや、兄の本音なら、絶対私だって!」

「観察対象、愛情表現パターン再検証……」

「黄金の愛、隠しきれぬ真実──」

「うわああああああああああああ!!!!」

 リビングが、

 カオスと化した。

 そして、

 その中心にいる、

 俺は、

 当然、

 まだ、

 爆睡していた。

 夢の中で、

 なぜか、

 全員に追いかけ回される悪夢を見ながら──。

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