同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第五〇四話『夜這い作戦──ルナの暴走』

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 夜。

 寮のリビングには、またしても妙な熱気が立ち込めていた。

 中心にいるのは、もちろん──

 ルナだった。

「──だからさ!」

 バン! とテーブルを叩きながら、
 彼女は無邪気な笑顔で叫んだ。

「先に手ぇ出した者勝ちってことで!!」

「…………」

 ヒロインズ全員が、静かに固まった。

 誰もが、

 それが冗談でないことを、

 すぐに察していた。

「……手って、何の?」

 碧純が、ぎこちない声で聞く。

「なにって、兄の寝込みを襲うってことだよ!!」

 ルナは、にっこり笑った。

「いやいやいやいや!!」

 すみれが即座に止めに入る。

「さすがにそれは、常識的に──」

「観察対象、夜間接触計画……」

 ひよりが、メモを取り始めた。

「黄金の夜、禁断の儀──」

 ことねが謎ポエムを唱え始めた。

「わ、わたくしも……っ、負けません……!」

 ミレーヌが顔を真っ赤にして拳を握る。

「……ふふ、面白そうですわね」

 エレノアが涼しい顔で笑った。

「…………」

 紗凪は、

 何も言わなかった。

 ただ、

 ぎゅっと、

 拳を握り締めていた。

 ──こうして。

 夜這い大作戦は、

 静かに、

 そして確実に、

 スタートを切った。

 ◆

 時刻は、深夜。

 弘弥の部屋。

 ──無防備にも、

 彼はぐっすりと眠っていた。

 柔らかな寝息。

 無防備な寝顔。

 そして、

 時折、無意識に布団をぎゅっと抱きしめる仕草。

 そのすべてが、

 致命的なまでに、

 甘かった。

 最初にドアを開けたのは、

 当然、ルナだった。

「よっしゃ、トップバッター!!」

 小声でガッツポーズを取りながら、
 そろりそろりと弘弥に近づく。

 そして──

「……うわ、近くで見ると破壊力やば……」

 顔を真っ赤にしながら、

 手を伸ばす。

 ぴと。

 そっと、弘弥の手に、自分の指を絡めた。

 ──その瞬間。

 寝ぼけた弘弥が、

 無意識に、

 ルナの指を、

 ぎゅっと握り返した。

「っ……!!」

 ルナの脳内で、

 理性が、

 爆発四散した。

「ふぁ……、無理無理無理、尊い、死ぬ……っ!!」

 半泣きになりながら、
 ルナは転がるように部屋を飛び出していった。

 ──次。

 碧純が、そろそろと入ってきた。

 兄の寝顔を見た瞬間、

 顔が真っ赤に染まった。

「……に、兄……」

 そっと、手を伸ばす。

 額にかかった髪を、優しく払う。

 ──その瞬間。

 弘弥が、

 無意識に、

 「……あお……すみ……」

 と、微かに寝言を呟いた。

 碧純、即死。

 次々と、

 ヒロインズが突撃した。

 すみれは、そっと手を握っただけで顔を真っ赤にして撤退。

 ひよりは、観察ノート片手に記録を取ろうとしたが、弘弥の無防備な寝顔に膝から崩れ落ちた。

 ことねは、「契約完了──」とか呟きながらそっと手を重ねたが、顔真っ赤で即離脱。

 ミレーヌは、ただ「かわいいです……」と涙ぐんで倒れた。

 エレノアは、「これは……国家レベルの罪ですわ……」と呟きながらそっと頬を撫でた。

 そして、

 最後に入ってきた紗凪は──

 ただ、

 遠くから、

 じっと、

 弘弥を見つめていた。

 何も触れず、

 何も近づかず、

 ただ、

 そっと、

 微笑んだ。

(……バカ)

(昔から、寝顔だけは、無防備だったくせに)

(こんなに、かわいくなって……)

(好き、だよ)

(ずっと、好きだった)

 そっと、

 心の中で、

 囁いた。

 ──そして、

 誰にも気づかれないように、

 静かに、

 部屋を後にした。

 外では、

 大騒ぎするヒロインたちの声が響いていた。

「ヤバい、兄の寝顔、ガチで無理!!!」

「萌え死ぬわコレ!!!」

「観察対象、破壊力最大」

「黄金の夢精夜──!」

 弘弥の知らないところで、

 彼の寝顔による、

 世界最大級の破壊事件が、

 静かに、

 発生していた。

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