同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
522 / 630

【第五一四話】『手を繋いだら運命!? ジンクス実践バトル』

しおりを挟む
 中庭の銀杏の木の下。
 午後の柔らかな陽光が、色づき始めた葉を黄金色に染めていた。

 弘弥は、文化祭の喧騒から少し離れたこの静かな場所で、ぼんやりと空を見上げていた。

(……なんか、静かだな。)

 休憩だと思って誘導されてきたが、周りに人気はない。
 不思議に思いながらも、弘弥はベンチに腰を下ろした。

 ──そこへ、最初に現れたのはルナだった。

「お兄、こっち来て!」
 満面の笑みを浮かべて走り寄ると、
「せっかくだから一緒に写真撮ろうよ~!」
 と、手を引っ張った。

「あ、ああ……?」

 手を引かれるがまま、弘弥は立ち上がる。
 ──その瞬間。

 ぎゅっ。

 ルナが、手を繋いだまま、自然に腕を組んできた。

「へへー、自然に成功~♡」
 耳元で小さく囁かれ、弘弥の顔が真っ赤になる。

(な、な、なにが自然だよ!? めちゃめちゃ意図的だろこれ!!)

 だがルナは、まるで何も気にしていないかのようにスキップしながら銀杏の木の周りを回り始めた。

 ──そこへ、碧純が登場した。

「ルナだけずるい!」
 怒りながら駆け寄ってきて、
「兄、こっち! 私と回ろう!」

 そう言うと、当然のように手を奪い返した。

 ぎゅっ。

「うあああ……」

 弘弥の手を握る碧純の指は、ほんのり汗ばんでいて、でもすごく優しかった。

「これ、文化祭の……特別なジンクスなんだってさ。」
 碧純は顔を赤くしながら呟いた。

(ジンクス……?)

 意味を理解する前に、次の刺客が来た。

「失礼します──」

 静かな声と共に、すみれが手を差し出した。

「文化祭で、願掛けしておくのも悪くないですよ。」
 微笑みながら、すっと手を握ってくる。

 ぎゅっ。

 すみれの手は、ひんやりと涼しく、でも確かな温もりがあった。

「……あなたの未来に、幸せが訪れますように。」

 囁かれ、弘弥の心拍数が跳ね上がる。

(な、なにこの流れ……!?)

 わけもわからずパニックに陥る弘弥。

 そして。

「データ収集中──手を握ります。」

 無表情でひよりが手を握ってきた。

 ぎゅっ。

「!?!?!?」

「恋愛成功確率、30%上昇確認。」
 淡々と言いながら、手を離さない。

(いや、離して!? 無理無理心臓止まる!!)

 さらに。

「弘弥様っ!」

 ミレーヌが駆け寄ってきた。

 民族衣装のスカートを翻しながら、
 彼女は、顔を真っ赤にしながら両手で弘弥の手を包み込んだ。

 ぎゅぎゅっ。

「わ、わたくしも……! 弘弥様と……この文化祭で……!」

 半泣きで震える彼女を前に、弘弥は抵抗できなかった。

(た、助けて誰か……!)

 そんな悲痛な心の叫びもむなしく、次の刺客が登場した。

「皆様、わたくしもお仲間に入れていただきますわ。」

 エレノアだった。
 彼女は優雅な仕草で弘弥の手を取ると、
 そのまま、手の甲に軽くキスを落とした。

 ちゅっ。

「貴族式の愛情表現でございます。」

 耳元で囁かれ、弘弥は完全に沈黙した。

(……む、無理……胃が、胃が……!)

 ふらふらと後ずさる弘弥。
 だが、最後に、最も静かな存在が近づいてきた。

 紗凪。

 彼女は、何も言わず、
 ただ、弘弥の袖をそっと引っ張った。

 弘弥が振り向くと、紗凪は小さく手を差し出していた。

 迷いも、恥じらいもない。
 ただ、まっすぐに。

 弘弥は、そっとその手を取った。

 ぎゅっ。

 二人の手が重なった瞬間、
 紗凪は、ほんの少しだけ、微笑んだ。

「……ずっと、繋いでたい。」

 その一言は、
 誰よりも静かで、
 誰よりも強かった。

 弘弥は、言葉を失ったまま、ただ頷いた。

 そして──

 その様子を、物陰から見ていた他のヒロインズが、
 全員、無言で爆発寸前になっていた。

「……許さん。」

「兄、覚悟しろ。」

「絶対に……負けない。」

 それぞれの胸に、再び炎が灯るのだった。

 ──文化祭編、さらなる混沌へ突入。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...