同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第五四二話】 『覚醒──新たなる“美少女おにぎり”理論』

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「……あぁ。」

 弘弥は、
 手に残るぬくもりをじっと見つめながら、
 静かに呟いた。

「わかった……!」

「……すべてが、つながった。」

 ◆

 ヒロインたちが、顔を見合わせる。

「兄……?」
 碧純が不安そうに声をかける。

「どしたの……?」
 ルナも手を止めて首を傾げる。

 弘弥は、
 まるで天啓を受けたかのような顔で、
 テーブルに両手を叩きつけた。

「素手だ!!」

「え?」

「素手で握る!!」

「え、うん、それはもうやったけど……」

「違う!!」
 弘弥は叫んだ。

「素手で握るってことは、つまり──」

「その人の“温もり”を、直接ご飯に伝えるってことだ!」

「そこには、体温が、汗が、皮脂が──」

「──そして、愛が、詰まってる!!」

 ◆

 沈黙。

 ヒロインたちは、
 ぽかん、と口を開けた。

 弘弥は、
 さらに加速する。

「つまりだ!!」

「素手で握られたおにぎりには!」

「作った人の青春が──」

「愛情が──」

「生体情報が──」

「──全部、詰まってる!!!」

「それを、俺は、食べたんだ!!」

「だからこんなに、心が満たされるんだ!!!」

 弘弥の目は、
 完全に覚醒していた。

 いや、
 輝いていた。

(──美少女たちの汗と体温と愛情が染み込んだおにぎり……)
(これぞ、青春の結晶……!!)

(小説にするしかない!!!)

 ◆

「……兄、やっぱり……」

「……ちょっと……」

「……いや、かなり……」

「……変態だわ。」

 ヒロインたち全員が、
 揃ってため息をついた。

 だが、
 その顔には、
 どこか呆れ半分、
 誇らしさ半分の色が浮かんでいた。

「まぁ……兄らしいっちゃ、兄らしいか。」
 碧純が苦笑する。

「変態だけど……天才。」
 すみれが小さく呟く。

「青春=変態の公式、証明完了。」
 ひよりはノートに書き込む。

「兄、マジで、たまに尊敬するわ。」
 ルナがニヤリと笑った。

「わ、わたくしも、先生を信じますの!」
 ミレーヌも両手を握りしめた。

 ◆

「……よし。」

 弘弥は立ち上がった。

「書くぞ。」

「絶対に、書き上げてやる。」

「美少女たちの素手で握ったおにぎりに、救われる青春小説──!」

「“きみと、おにぎりと、永遠と。”」

「タイトル、これで決まりだぁぁぁぁぁ!!!!!」

 ◆

 碧純たちが、
 呆れながらも拍手を送る。

「はいはい、がんばれ兄。」

「青春だなぁ……(遠い目)」

「観察対象、通常運転確認。」

「兄が青春爆発するたび、世界がちょっと面白くなるから、いいと思う!」

「うぅ……がんばってくださいですの!」

 ◆

 こうして──

 真壁弘弥は、
 また一つ、
 青春を爆発させた。

 世界に誇る、
 天才か変態か分からない青春作家として。

 ぬか床、ワイン、そして──

 次は、
 美少女おにぎりで、世界を震撼させるために!

【続く】
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