同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『君と、納豆と、発酵と。──美少女納豆実験編』

【第五六七話】 『納豆爆誕──そして爆発!?』

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「……できてる……!」

 早朝五時。
 まだ陽の昇らぬ台所に、静かな歓喜の声が響いた。

 ひよりが抱えていたタオルの中から、ふわりと独特な香りが漂っていた。
 発酵が進んだ証拠。つまり──納豆は、成功していたのだ。

「お、お兄……! ほら見て……ねばってる! わたしの納豆、ねばってるのぉぉぉぉ!」

 碧純が目を潤ませながら、抱きしめていた大豆タオルを開き、ねばり気を確認。
 ルナも「やばっ、これマジで納豆じゃん……!」と興奮気味にタオルを振っている。

「私のは……すこし、水分が多すぎたかもしれません」
 すみれが渋い顔で大豆の状態を観察する。手には温度と湿度の記録ノート。まさに学者の風格。

「発酵は生き物。油断すれば逆にこちらが“喰われる”可能性もある……」
 ひよりがマジトーンで語ると、全員が一歩引いた。

「……わたくしのは、どうかしら」
 ミレーヌは、タオルを開く瞬間に緊張のあまり唇を噛んでいた。
 しかし、中身は……ぬるぬると、艶やかな発酵体だった。

「成功ですの!? わたくし、納豆を抱いて成功したのですの!?」

「納豆成功者」の称号を得た喜びにミレーヌがスキップし始めたその時──。

 ──バチンッ!!

「きゃあああああああああああ!!」

 異音と共に、ひよりのタオルが破裂した。
 勢いよく中身の納豆が噴出し、真正面に立っていた弘弥のシャツにダイレクト命中。

「ぐえっ……!? ぬ、ぬるっ!? ぬめええええっ!?!?」

「ひより!? どういうこと!? 納豆爆弾!?」

「わ、私、湿度と温度の限界をテストしてたら……発酵が臨界を超えて、自己増殖を──!!」

「納豆が自己増殖するなぁぁぁぁぁぁ!!」

 さらに二次災害発生。
 弘弥のシャツに命中した納豆がスプラッシュし、今度はルナの脚にも飛び散る。

「ぎゃー! なにこれ!? 足が、足がぬるぬるするんだけどおおおお!!」

「どこ触ってんの!? やめてルナぁぁぁぁぁ!!」と碧純が慌ててタオルを掴むが、すでに時遅し。

 ルナの足についた納豆が床に垂れ、滑ったミレーヌが華麗なバク転で倒れ込む。

「うわあああ! わたくしの発酵があああああ!」
「青春が……ぬるぬるにぃぃ!!」

 ヒロイン全員、床に転がりながら悲鳴を上げる台所。

 弘弥は、納豆まみれの自分を見下ろし、ふと静かに呟いた。

「……これが……美少女たちが一晩中胸で温めた大豆……その命が今、俺のシャツに……」

「そんな風に言うなぁぁぁぁぁぁ!!!」
 すみれが顔を真っ赤にしながら、納豆の飛沫から弘弥を拭う。

「でも……青春って、こういうことなんだよな……」

「悟らないで!!!」

 混沌と粘り気と匂いが満ちる朝の台所。
 だが弘弥の中には、確かに新しいインスピレーションが芽生えていた。

 ──これは物語だ。
 ──これは奇跡だ。
 ──そして、これは……美少女納豆である。

 つづく。

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