576 / 630
『君と、納豆と、発酵と。──美少女納豆実験編』
【第五六六話】 『納豆の夜──汗とぬるぬると青春と』
しおりを挟む
「ぬ、ぬか床より……きつい……かも……」
タオルの上から藁に包まれた大豆を抱えながら、ルナが呻いた。
「でも、ちゃんと発酵させないと……」
すみれは腕の間に挟んだまま姿勢を保ち、顔だけこちらを向く。
「温度が重要なの。特に初期の発酵段階で36~40度を保たないと、納豆菌が活性しにくくて……」
「……体温管理のための寝返り、禁止……苦行では……」
ひよりはブランケットの中で静かに震えていた。
(それでもデータ収集中)
「ていうか……なんでわたくし、またこの役目ですの!?」
ミレーヌは腹の上に乗せた藁包みをにらみつけながら、かぶせ布団に汗をにじませていた。
そして、静まり返る夜の寝室。
その中に、なにやら……ぬるっとした気配が。
「…………」
弘弥は一人、別室のソファで毛布を被りながら、それでもどこか落ち着かない気持ちで夜を迎えていた。
「ヒロインズ全員、納豆抱いて寝てるって……なにこの状況……」
執筆のための参考資料──それは確かにそうだ。
だが。
(……大丈夫かな。あれ、いくら温度が必要とはいえ、密着させるって……)
その頃、少女たちはそれぞれの悶えの中にあった。
「ぬるぬるしてきた……!? これ、絶対できてる! 絶対に発酵進んでる!」
ルナの声が、寝袋の奥から聞こえる。
「兄……これ食べてくれるかな……」
碧純は額に汗をにじませながらも、大豆を胸元にしっかり固定し、兄のためを思いながら耐えていた。
「ふふ、ぬか床よりも……こっちのほうが……すごいわね」
すみれの声が少し興奮気味だった。
「……発酵中……生体反応──安定。だが、粘度不足」
ひよりの記録メモは止まらない。
「もう……我慢できない!」
ミレーヌは寝返りを打ちそうになり、必死に踏みとどまる。
──そして、朝。
「ふぁ……」
弘弥が目を覚ましたのは、まだ薄明るい時間。
そっと部屋を覗き込むと──
「ん……お兄ちゃん……」
碧純が寝言で呟きながら、胸の上に抱えていた藁包みを抱きしめ直す。
(……なんて光景だ……青春か……これは……)
弘弥はそっと近づき、テーブルに用意していた「試食用皿」を手にする。
「……よし、食ってみるか」
藁包みの一つを開封する。
ふわっと立ち上る、あの“発酵臭”。
(うおっ……本物だ……)
混ぜて、混ぜて、箸で口に運ぶ──
「うまい!!」
弘弥は叫びかけた声を、慌てて手で押さえる。
(いや、これは……ただの納豆じゃない。魂の納豆だ!)
その声で、ヒロインたちが順に目を覚まし始めた。
「……できたの?」
すみれが髪をかき上げながら近寄る。
「めっちゃ、うまい」
弘弥は力強く言った。
「え……ほんとに? うちの体温で、うまく育ったの……?」
碧純が赤面する。
「ぐちゃぐちゃとか言ってごめん……ちょっと……感動してる……」
ルナは目を潤ませた。
「これが青春納豆……」
ひよりは納豆に見惚れるように言った。
「なんなの……わたくしたち……また変な青春してません……?」
ミレーヌはぽつりと呟いたが、顔には小さな誇りが浮かんでいた。
弘弥は、朝日に照らされた納豆を見つめながら──
(……よし、また書こう)
またしても、青春をテーマに、バカで本気な物語を。
──そう、
『君と納豆と、粘る未来。』
小説のタイトルが、静かに頭に浮かんでいた。
タオルの上から藁に包まれた大豆を抱えながら、ルナが呻いた。
「でも、ちゃんと発酵させないと……」
すみれは腕の間に挟んだまま姿勢を保ち、顔だけこちらを向く。
「温度が重要なの。特に初期の発酵段階で36~40度を保たないと、納豆菌が活性しにくくて……」
「……体温管理のための寝返り、禁止……苦行では……」
ひよりはブランケットの中で静かに震えていた。
(それでもデータ収集中)
「ていうか……なんでわたくし、またこの役目ですの!?」
ミレーヌは腹の上に乗せた藁包みをにらみつけながら、かぶせ布団に汗をにじませていた。
そして、静まり返る夜の寝室。
その中に、なにやら……ぬるっとした気配が。
「…………」
弘弥は一人、別室のソファで毛布を被りながら、それでもどこか落ち着かない気持ちで夜を迎えていた。
「ヒロインズ全員、納豆抱いて寝てるって……なにこの状況……」
執筆のための参考資料──それは確かにそうだ。
だが。
(……大丈夫かな。あれ、いくら温度が必要とはいえ、密着させるって……)
その頃、少女たちはそれぞれの悶えの中にあった。
「ぬるぬるしてきた……!? これ、絶対できてる! 絶対に発酵進んでる!」
ルナの声が、寝袋の奥から聞こえる。
「兄……これ食べてくれるかな……」
碧純は額に汗をにじませながらも、大豆を胸元にしっかり固定し、兄のためを思いながら耐えていた。
「ふふ、ぬか床よりも……こっちのほうが……すごいわね」
すみれの声が少し興奮気味だった。
「……発酵中……生体反応──安定。だが、粘度不足」
ひよりの記録メモは止まらない。
「もう……我慢できない!」
ミレーヌは寝返りを打ちそうになり、必死に踏みとどまる。
──そして、朝。
「ふぁ……」
弘弥が目を覚ましたのは、まだ薄明るい時間。
そっと部屋を覗き込むと──
「ん……お兄ちゃん……」
碧純が寝言で呟きながら、胸の上に抱えていた藁包みを抱きしめ直す。
(……なんて光景だ……青春か……これは……)
弘弥はそっと近づき、テーブルに用意していた「試食用皿」を手にする。
「……よし、食ってみるか」
藁包みの一つを開封する。
ふわっと立ち上る、あの“発酵臭”。
(うおっ……本物だ……)
混ぜて、混ぜて、箸で口に運ぶ──
「うまい!!」
弘弥は叫びかけた声を、慌てて手で押さえる。
(いや、これは……ただの納豆じゃない。魂の納豆だ!)
その声で、ヒロインたちが順に目を覚まし始めた。
「……できたの?」
すみれが髪をかき上げながら近寄る。
「めっちゃ、うまい」
弘弥は力強く言った。
「え……ほんとに? うちの体温で、うまく育ったの……?」
碧純が赤面する。
「ぐちゃぐちゃとか言ってごめん……ちょっと……感動してる……」
ルナは目を潤ませた。
「これが青春納豆……」
ひよりは納豆に見惚れるように言った。
「なんなの……わたくしたち……また変な青春してません……?」
ミレーヌはぽつりと呟いたが、顔には小さな誇りが浮かんでいた。
弘弥は、朝日に照らされた納豆を見つめながら──
(……よし、また書こう)
またしても、青春をテーマに、バカで本気な物語を。
──そう、
『君と納豆と、粘る未来。』
小説のタイトルが、静かに頭に浮かんでいた。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる