同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【帰宅後のドタバタラブコメ編】

【第六〇二話】 『青春は、まだまだ続く──次は文化祭準備編へ!』

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「さて──」

 夕暮れの光が差し込むリビングに、弘弥の小さな声が響いた。

 ラグの上、ちゃぶ台を囲んでいた少女たちは、その声に一斉に顔を向けた。

 すみれ、ルナ、碧純、ひより、ミレーヌ、紗凪、ことね──

 ここに集ったすべてのヒロインが、すでに“ただのクラスメイト”や“隣人”という関係ではなかった。

 想いを伝え、ぶつかり、傷ついて、それでもここに“いる”。

 そして、それぞれが弘弥を「本気で好き」だと宣言したばかりだった。

 弘弥は、ひとつ深呼吸をする。

「……俺、まだ答えを出すことはできない。誰かひとりを選ぶには、みんなの気持ちが、本気すぎて……」

 そう言うと、全員の目に緊張が走った。

 だが弘弥は、その先を続けた。

「でも……俺、絶対に逃げない。ずっと、うやむやにしたままにしたり、誰かの気持ちをないがしろにしたりなんて、絶対にしないって決めたんだ」

「いつか、ちゃんと答えを出す。俺自身の気持ちで、真っ直ぐに」

 ──しん、と一瞬の沈黙が流れた。

 それを最初に破ったのは、碧純だった。

「……お兄ちゃんらしいよ。誠実で、優しくて、ちょっと不器用で……でも、だからこそ、私たちみんなが惹かれたんだと思う」

 すみれがふっと微笑む。

「なら、私たちはその時まで、ずっと待ってあげるわ。“勝つ”ためにね」

 ルナが両手を腰に当て、にかっと笑った。

「選ばせないように、全力で誘惑してやるんだから! 夢でも現実でも!」

 ひよりはメモ帳を閉じ、「新章、“現実誘惑バトル延長戦”……っと」と謎のタイトルを記録していた。

「これからも観察は続けるからね。私が一番、データも想いも、蓄積するから」

 ミレーヌが優雅に頷いた。

「わたくしの“異文化恋愛戦略”も、まだ第1フェーズですわ。次の段階に進みましょう、フフ」

 ことねは小声で、「わ、私も……が、頑張ります!」と両手をぐっと握った。

 そして紗凪は、何も言わず、ただそっと弘弥の袖を掴んでいた。

 静かだけれど、その指先には「私だって、負けない」という強い意志が込められていた。

 ──その瞬間だった。

 弘弥の目に、テーブルの端から少しはみ出している一枚のプリントが映った。

「あれ……?」

 何気なく手に取る。

 そこには、こう書かれていた。

『文化祭準備スケジュール(生徒配布用)』
 ・準備期間:来週から開始
 ・代表者は企画書を提出のこと
 ・制作系・食品系の出し物は保健指導が入る可能性があります

「……あ……やばい」

 一気に青ざめる弘弥。

 それを見て、ヒロインたちもざわざわし始める。

「なにそれ?」「文化祭の準備?」

「え、まさか、弘弥くん……」

 弘弥は、まるで“忘れてはいけない借金”を見つけた人間のように震えながら呟いた。

「そうだ……文化祭。クラスの出し物、企画書……俺、まだ何も書いてない……!」

 ヒロインたちの目が光る。

「──つまり、また一緒に準備するってことだよね?」

「また“正妻戦争”、開幕ってことじゃん!」

「今度こそ、本気で勝たせてもらいますわよ!」

「お兄ちゃんはもう、逃げられないんだから!」

 少女たちの声が、部屋中に響き渡った。

 弘弥は項垂れながらも、その声に少しだけ笑みを浮かべる。

「青春って……体力勝負なんだな……」

 その呟きに、誰かがそっと返した。

「でも、そのぶん、楽しいでしょ?」

 ──まだ答えは出ていない。

 けれど、“青春の物語”は、確かに続いている。

 ラスト、窓の外。

 沈みかけた夕陽の中に、ふわりと風が吹き込む。

 テーブルのプリントがめくれ、裏には一行──

『文化祭まで、あと9日』

 その文字を背景に──

「文化祭準備編、開幕!」

 全員の声が、心地よく響いた。

 ──青春は、まだまだ続く。

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