同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
621 / 630
『文化祭準備編──青春爆走、正妻戦争リターンズ!』

【第六一〇話】 『文化祭、開幕──青春は止まらない!』

しおりを挟む
 ──朝、空は抜けるような青だった。

 秋の風が校門を吹き抜け、色づき始めた銀杏の葉が、そっと舞う。

 文化祭の幕が、上がる。

 

「よっしゃあああああああああ!!」

 開門と同時に叫んだのは、もちろんルナ。

 テンションはすでにマックス、ツインテールの先まで気合が漲っていた。

 

「今日だけは、マジで主役張るつもりでいくから!」

「……お祭りは好きだけど、主役とは限らないわ」
 すみれが冷静に微笑みながらも、目元にはほんのり勝気な光。

「兄はわたしと一緒に動くべきです」
 碧純は既に“連れ回す用”のスケジュール表を握っていた。

「すでに午後から“団子ブース→抹茶試飲→裏庭デート”が確保されてますから」

 

「ひより、今日は記録は控えるんだよね?」

「いえ、青春の記録はいつでも最優先です」
 カメラとノートを両手に構えるひよりの眼差しは鋭かった。

 

「ですの!弘弥様、わたくしと一緒にワイン文化紹介ブースへ参りましょう!」

「ミレーヌ、それ日本の高校文化祭に絶対ないから」

 

「ちなみに配信枠、もう5枠埋まってるからね♥」
 ことねがスマホで自撮りしながら言う。

「弘弥くんの初笑顔、初おやつ、初疲労顔まで実況予定です♥」

 

 弘弥は、朝からもう既に疲れていた。

(俺の青春、どこで間違えたんだろう……)

 だが、その顔には不思議と笑みが浮かんでいた。

 

 ◆

 

 弘弥のクラスの出し物──「青春複合カフェ“オムニバース”」

 文化、科学、喫茶、和室、メイド、VTuber、演劇など全部盛り企画。

 詰め込みすぎて大事故になるかと思われていたが──

 意外や意外。

「なんかよく分かんないけど面白い!」
「全部体験できるの、神じゃね?」
「いろんな趣味の友達と一緒に来れて助かる!」

 というSNS投稿がバズり、学内でも口コミが広がり大盛況。

 

 弘弥は、メイドチームの案内役から喫茶チームのレジ係、和室の茶道サポート、果てはVTuberステージでの“影ナレ”までこなす。

 

「弘弥くん、疲れてない?」
 舞台袖でこっそりすみれがペットボトルを差し出してくれる。

「兄、次は団子係ね」
 碧純が手綱を握り、誰にも渡さぬ決意を見せる。

「そのあと、アタシと縁日コーナーで射的勝負ね!」
 ルナが嬉しそうに指を鳴らす。

「青春とは順番ではない……!」
 ひよりが何かに開眼していた。

「これ……もしかして、恋愛デスマッチなのでは?」
 ミレーヌはうっすら震えていた。

「これは全て、文化です」
 ことねだけが記録を続けていた。

 

 そして──

 午後。

 ステージ発表も終わり、喧騒のピークが過ぎた放課後。

 

 弘弥は、昇降口近くのベンチで、ふぅっと一息ついていた。

 制服の袖はまくり上げられ、額にかいた汗が秋風でひんやり冷える。

(やりきった……のかな)

 

 そんな彼の前に、ヒロインたちが、全員集合した。

 

「弘弥くん」

「兄」

「今日、空いてる?」

「ちょっとだけでいいの」

「いえ、私が先です」

「……先着順ではなく、重要度で判断を」

 

 ──その問いは、当然一つ。

 

「ねぇ、弘弥。誰と一緒に文化祭、回るの?」

 

 

 弘弥は目を見開いた。

 今までの“好き”も“青春”も“ドタバタ”も──全部が、この瞬間に収束していくような錯覚。

 

(誰と……)

 喉が鳴る。

 鼓動が早まる。

 

「……」

 彼の唇が、音を紡ごうとした、まさにその時。

 

「ねぇねぇ、真壁くんって、この文化祭の企画、全部回してるんだってー!」

「え、すごくね? 推しにしよーぜ!」

 

 ──一般女子生徒の集団が横から突撃してきた。

 

「わわわ、ちょ、ちょっと!弘弥くんはこっち!!」
 碧純が慌てて彼の腕を掴む。

「文化祭、一緒に回るの、私が先ですの!!」
 ミレーヌが髪を振り乱す。

「全員、落ち着いて……!まずは話し合いからっ!!」
 すみれが間に割って入るが──もはや制御不能。

 

 ──青春は、止まらない。

 恋も、嫉妬も、祭りの熱気も、ぜんぶごちゃまぜ。

 

 それでも、弘弥は思う。

(……この時間が、ずっと続いたらいいのにな)

 

 そして物語は次なる舞台──

『文化祭本番・選択の時』編へと続く。
 ──To be continued...

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...