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本能寺から始める常陸之介寛浩

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6月/初夏/修学旅行 in 鴨川沿い/夜、カップルが等間隔に座っている土手

地雷系ネガティブ女子 「ねえ、ねえ……あたし、今日のために髪巻いてきたの。気づかないの、知ってたよ」

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 タイトル:『ねえ、ねえ……あたし、今日のために髪巻いてきたの。気づかないの、知ってたよ』

 🎧シチュエーションボイス/一人芝居台本

 🌃**【舞台背景・情景描写】**

 6月。修学旅行三日目の夜。
 場所は京都、鴨川沿いの土手。
 空は曇っているが、月はうっすら滲んでいて、湿った風が柳の葉を揺らしている。
 土手には、カップルたちがまるで打ち合わせたように等間隔に並び、肩を寄せ合って話している。
 誰かの笑い声。
 誰かの沈黙。
 誰かの告白。
 そのどれにもなれなかった一人の少女が、ぽつりと、あなただけに向けて喋り始める──

(※ここから本文台詞/一人芝居)

 ……ねぇ、ねぇ。
 あたし、今日のためにさ……髪、巻いてきたんだよ。

(間。川の音がかすかに)

 朝、鏡の前で……
 ホテルの洗面台、めっちゃ狭くてさ、
 でも、あたし頑張ったの。
 いつもより早く起きて、みんなに見られないようにこっそり。
 巻き方、動画で勉強してきたんだ。
「男子って、ふわっとしてる髪、好きなんだよ」って聞いて、
 だから──
 あんたの目に、映るかなって思って。

(間)

 でも、気づかないんだね。
 うん、うん、知ってた。
 知ってたよ、そんなこと。
 あたしの変化なんて、
 いつも気づかれないまま流れてくの、
 ……まるで、鴨川の水みたいにね。

(小さく笑う)

 どうしてだろ。
 こんなとこ、来なきゃよかったのに。
 カップルばっかじゃん。
 まるで「リア充博覧会」って感じ。
 うちらだけ、場違いみたいに離れて座ってさ、
 ……なんか、恥ずかしいよね。

(沈黙)

 あのね、
 あたし、こう見えてさ──期待、してたんだ。
 今日、あんたと二人きりになれるかなって。
 班行動のとき、何回もあんたの横に立とうとして、
 けど、いつも別の子に話しかけられて、
 ……あたし、空気みたいだった。

 でも、それでもよかった。
 最後の夜だけは、って、
 ほんと、バカだよね。
 なんでこんなに、希望持っちゃったんだろ。

(風が吹く)

「ねぇ」って、何回も言ってるのにさ。
 あんた、ちゃんと聞いてる?
 それとも、またスマホ?
 あたしと話してるときくらい、
 ……画面、見ないでよ。

(息を吸って、少し声が震える)

 あたしね、
 この前、日直だったとき、
 黒板消すの遅れたせいで、
 あんたがノート書けなかったの、謝りたかったんだ。
 でも言えなかったの。
 あたしが話しかけると、
 いつも、どこか遠くを見てるから。

(間)

 ……怖いんだ。
 あんたに嫌われるのが、一番怖い。
 だったら、無視されるほうがマシ。
 でもね、今日みたいな夜になると、
 ダメなんだよ、ほんと、
 “ちゃんと見てよ”って、思っちゃうの。

 あたしが髪巻いたことも、
 今日のピアスが初めてつけたやつだってことも、
 気づかないの、知ってた。
 でも、あんたが“気づこうとしない”ってことが、
 一番、刺さるんだよ。

(沈黙。長め)

 ……ねぇ。
 ひとつだけ聞いていい?
 あたしって、キモい?
 ……めんどくさい?
 ……なんか、重い?

(息を飲む)

 ああ、だよね。
 言えないよね、そういうの。
 優しいもんね、あんた。
 それが一番、あたしを壊すんだよ。

(声がかすれる)

 優しくしないでよ。
 期待しちゃうじゃん。
「おはよう」とか「ありがとう」とか、
 そういう普通の言葉すら、
 あたしには毒なんだよ。

(涙をこらえるように)

 他の子と、普通に喋ってるの見たとき、
 心、ぐちゃぐちゃになって、
「死ね」って思ったことある。
 でも、死んでほしいのは、あんたじゃなくて、
 その場にいた自分だった。
 透明になれたらって、本気で思ったの。
 あたしなんか、存在しないほうがいいって。

 でも、
 それでも──
 好きなんだよ、
 ……バカみたいに、ね。

(風の中、微笑)

 鴨川って、流れる水の音が、
 なんか、誰かの心臓みたいだね。
 ぽたぽた落ちて、静かに溶けてく感じ。
 こんなとこで喋ってる自分、ほんと、恥ずかしい。
 でも──
 誰かに言わないと、
 心の中、ぐちゃぐちゃで腐っちゃいそうで。

(間)

 ねぇ、
 最後にひとつだけお願いしていい?
 あたしのこと、
 “いた”って、覚えてて。

 髪を巻いて、
 ピアスつけて、
 他の誰よりも、
 あんたの横にいたがってた女の子がいたって、
 ……たった、それだけでいいから。

 忘れないで。
 ほんの一晩、
 あんたの隣にいた“地雷”がいたことを。

(沈黙。風の音だけ)

 ……ありがと。
 こんな重い女の独り言、
 聞いてくれて。
 ──バイバイ。

(立ち上がる足音。
 小さな靴音が遠ざかり、風と鴨川の音に混ざって消えていく)

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