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ヒロイン争奪戦・正妻ルート開幕

第14話 『玲奈の逆襲──新作表紙の“ヒロイン問題”』

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 土曜の午後。
 俺──久慈川幸喜は、自宅の書斎机に突っ伏していた。

 

「……マジかよ……マジだったんだな……」

 

 目の前にあるのは、担当編集・渋谷さんから送られてきたメール。

 添付ファイル:新刊第5巻 表紙案(ラフ)
 件名:【重要】新刊カバーキャラ選定について

 

 内容:

 表紙ヒロインには、今作から登場し読者人気の高い"玲奈"を採用予定です。
 地味子×文芸×制服+夕暮れというコンセプトで、読者の琴線を狙っていきます。
 なお他ヒロインとのバランスは、今後の巻で調整していきましょう。

 

「──いやいやいやいや、調整で済まないぞこれ絶対……」

 

 つまり──
 俺のラノベの最新刊で、表紙に抜擢されたのは磐城玲奈。

 歩美でも、幸香でも、舞香でもない。

 

 静かな、地味子系図書委員。

 しかして、その正体は──伝説のコスプレイヤーにして、俺の作品の最古参ガチ読者。

 

「……選ばれる理由は、分からなくもないんだけど……」

 

 ヒロイン修羅場戦線的には、火にガソリンだろコレ!!!

 

 

 ***

 

 それは、思った通り──爆発した。

 

 場所:日曜の俺の部屋。
 状況:なぜか全員集まっている。
 理由:冷蔵庫にあるプリンをめぐって。

 

「……は? 表紙、あの地味子なの?」

 歩美が言った。

 

「待って? 私じゃなくて? 十年以上連れ添ってるこの私を差し置いて?」

 

「……ねぇお兄ちゃん、どうして妹を差し置いて他の女の写真を表紙に使おうと思ったの?」

 幸香が言った。
 手に“兄毛瓶”を握りしめていた。

 

「“私を表紙にしたほうが売れます”ってアピールが足りなかったかな……?」

 舞香が言った。
 スマホのメモには、次巻ヒロイン案が30件並んでいた。

 

 そして。

「決まったことですので」

 冷静な声がした。

 

 そこには──玲奈が、いた。

 手にはプリントアウトされたラフ表紙案。

 表紙の彼女は、制服姿で夕暮れの図書室にたたずみ、ほんのりと笑っていた。

 

「担当編集さんに、“誰が最も『今の物語』を象徴するか”って聞かれたので、
 “私が先輩と一緒に、最も近くで物語を紡いでいます”と答えました」

 

 歩美「ちょ、待って!? その言い方ズルいでしょ!? 読者目線アピール!?」

 舞香「編集者の心を動かすとは……小癪な……!」

 幸香「……今度、彼女の図書委員記録簿をこっそり書き換えるね」

 玲奈「業務妨害は犯罪です」

 

 

 俺は、なぜか正座させられていた。

 目の前には“ヒロイン三連星”。

 玲奈だけ、やや斜め後ろに控えているが、存在感は爆増中。

 

「どうして、あたしじゃなかったの?」

 歩美が言う。
 声が、わずかに震えていた。

 

「私は、毎日ごはん作って、洗濯して、部屋も掃除して、
 あんたの編集打ち合わせも付き合って、
 それでも──“表紙”になれなかったの?」

 

「俺が選んだわけじゃ──!」

「でも、“反対できた”でしょ……?」

 

(……ああ……これは、想像以上に深い傷かも)

 

 続いて、舞香。

「私は──彼の“人生最初の恋”で、“作品の絵を担当してる”のよ?
 それでも、“物語の象徴”にはなれないってこと?」

 

 幸香も、静かに呟く。

「“お兄ちゃんの一部”として生きてるこの私よりも──
 “外の女”が選ばれるなんて、すっごく、すっごく……ね?」

 

 俺「だぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!」

 

 椅子を蹴って立ち上がる。

「確かに! 表紙は玲奈だ! でもそれは“物語上の都合”であって、
 恋愛的な意味で選んだわけじゃ──!!」

 

 ……言った瞬間、空気が止まった。

 

 玲奈の背筋がピクリと動いた。

 

「あ、あの、ごめん……?」

 

 玲奈はゆっくり立ち上がった。

 そして、表紙案の紙を胸に抱きながら、一言。

 

「──でも、私は“作品”の中で、あなたに選ばれましたから」

 

 その言葉は、爆弾だった。

 静かな地味子の、静かなる逆襲。

 

 歩美「は……?」

 舞香「それ、戦争よ?」

 幸香「毛、逆立った」

 

 ──修羅場、再燃。

 そして、玲奈がついに“表舞台に立った”日でもあった。

 

 

 ***

 

 夜。
 俺は、執筆PCの前にいた。

 

 画面には、新刊原稿の1ページ目。

 タイトル案の仮保存:

【青春ラブコメが書けない俺が、表紙で修羅場を呼んだ件】

 

「……おかしいな……ラノベって、もっと夢あるもんじゃなかったっけ……」

 

 編集・渋谷からのLINE通知:

 渋谷「玲奈さん、大正解でした。表紙案、社内アンケートで断トツです」
 渋谷「あと歩美さんから抗議の電話ありましたが、気にしないでね」
 渋谷「“ヒロインガチバトル”路線、続けていきましょう」
 渋谷「(編集者的には)最高です」

 

 俺「最高じゃねぇよぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」
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