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第二章 光となる人
第18話 危険な人
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それから、表向きは何も変わらない日常が続いた。
季節は夏になり、数少ない段ボールの中からは既に夏服が取り出されている。
柊真さんは相変わらず優しくて、甘い。
いつも気遣ってくれるし、そばにいると安心もする。
それなのに、あの日感じた違和感は、心の奥にずっと残り続けていた。
知りたい。
でも、踏み込めない。
堂々巡りが続く中、私は一人、ベッドでスマホを眺めていた。
……こういうとき、相談できる友達がいたらいいのに。
ふと、学生時代の親友である春菜を思い出した。
春菜は、小学校から大学までが一緒という唯一の存在でなんでも相談し合っていた過去がある。
彼女が関西に就職したあと、会う機会は減っていたけれど、たしかSNSで関東転勤になったと言っていたような……?
それも、もう一年以上前の話だから、今はどうなっているか分からないけれど。
連絡してみようかな。
連絡先から春菜の名前を探して、画面を開く。
スクロールして目に入った過去のやり取りに、私は苦笑いをこぼした。
<今度サークルの集まりあるよ!>
<久しぶりにご飯行かない?>
<この日どう?>
定期的に関東に帰省したタイミングに春菜は私を誘ってくれていた。
けれど、それに対して並ぶ、私の返信はひどいものだった。
<ごめん、今忙しくて>
<彼氏が帰ってくるからまた今度ね>
<今回はやめとく>
断り続けて、そのうち誘われなくなって、気づけばやり取りは途切れていた。
そんな現状を確認した手前少し迷ったけれど、断り続けた謝罪をしたい気持ちも湧いてきて、私は思い切ってメッセージを送った。
<久しぶり。今も関東にいるの?いたら久しぶりにご飯行かない?>
……会ってくれないかもな。
最後のメッセージは、二年前。
その履歴に、自己嫌悪とともに不安が大きくなる。
だけど、数分後に返ってきた言葉は思ったよりずっと明るかった。
<え、久しぶり!今、関東にいるよ!会おうよ!>
画面を見た瞬間、思わず、小さく息を吐いた。
トントン拍子で話は進んで、金曜日の仕事終わりに、飲みに行くことになった。
_/_/_/_/_/_/
待ち合わせたのは、駅から少し歩いたところにあるおしゃれなバルだった。
木目調のカウンターに、ほどよく賑やかな店内が可愛らしい。
先にメニューを開きながら手を振ってきた女性を見つけて、思わず足が止まった。
ショートカットに、ゆるくかかったパーマ。
元気な笑顔は学生の頃から変わらずハツラツとしていて、すぐに春菜だと気がつく。
「茉莉!」
久しぶりすぎる再会なのに、その声と笑顔だけで、一気に学生時代に引き戻された。
「春菜~~久しぶり!」
「久しぶり!とりあえず食べよ食べよ!何飲む?」
世話焼きで率先して動く腰の軽さも変わらない。
届いたドリンクで乾杯をして少し話しただけで2年の空白は消え去り、空気はすぐに当時のままに戻っていった。
「……卒業してからもたくさん誘ってくれてたのに、全然行けなくてごめんね。この間連絡した時にトーク遡ってたら、自分最低すぎて引いた」
私は、反省の色を出し背筋を伸ばしたけれど、春菜は対照的にケラケラと笑っている。
「いやいや、だって茉莉、彼氏いたじゃん。ほんと、尽くしすぎるとこ、昔から変わってないな~って思ってたよ」
思いも寄らない言葉が出てきて、私は目を丸くする。
「え、彼氏……そうだっけ?」
「そうだよ!自覚ないのも変わってない!茉莉って、彼氏がいるタイミング、ほんっとに友達と遊べなくなるの!連絡つかないし、こっちも逆に誘うの申し訳なくなっちゃうんだよねえ」
姉御肌な性格もあってか、まっすぐ飾り気のない言葉は懐かしかった。
ズタボロに言われているはずなのに清々しいくらいの直球さに、私は苦笑いするしかない。
「友達蔑ろにするのは違うよね、直さないと……」
そう自分自身にため息をつきながら、現状を振り返ってみる。
少し前までの京介のことや、今の柊真さんとの関係を思い返すと、正直思い当たる節しかなくて、言葉が出なかった。
「……で?」
グラスを傾けながら、春菜がにやっと笑う。
「飲みに誘ってきたってことは、フリーなんだ?」
楽しそうな彼女に、私はまた背筋を正して、わざとらしく一礼する。
「……京介とは、別れました」
「あーーー!懐かし!京介って、三年前くらいから付き合ってた人だよね?」
大きな声で言われて、思わず吹き出しそうになる。
京介とまだ仲良く順調だった頃は、低頻度ではあったけれど、まだ春菜たちとの集まりにも参加していた。
春菜は当時の私の話を覚えていたようだった。
「わー!よかった!あの人なんとなくモラハラ気質なところ感じてたし、みんなで心配してたんだから!」
……モラハラ。
胸の奥がちくりとする言葉をきっかけに思い出す。
彼との時間を作りたいがあまり、友達との時間を全キャンセルし始めた私に、確か春菜たちは全力で「それはおかしい」と伝えてくれていた。
だけど、私は何ひとつ、聞く耳を持たなかったのだ。
「ほんっと周り見えてなかったんだね、反省」
ぐびっとビールを飲むと、春菜はあっけらかんと笑った。
「それが茉莉のいいところでもあるけどね。でも、良い人に出会わないと最悪」
「はい。身に染みております」
そんな過去の恋愛の話から、仕事の話、学生時代のどうでもいい話まで、会えなかった二年間の話は途切れることなく盛り上がり、お酒も食事もどんどん進んでいった。
_/_/_/_/_/_/
ふたりともほんのりと酔いが回ってきた頃、春菜が少し照れたように口を開いた。
「私、ちょっと前に婚約したんだよね」
「えっ……!」
私は驚きで席を立ちそうになった。
「声かけてもらえてよかったよ。結婚式断れたら流石に傷つくし、実は連絡するの迷ってた」
笑い話みたいに言われたけれど、胸がきゅうっと苦しくなる。
「春菜。ほんっとにおめでとう。私今、すっごく反省した。親友の結婚をお祝いできないなんて本当に最悪だよ、もうちゃんとする!」
「なら良かった。茉莉も、いい人捕まえなよ。京介のあとは何かあるの?」
そう言われて私は、ここ最近の話をした。
出会った日のことから、救われたこと、支えてもらったことをひとつひとつ話していく。
「なにそれ、超素敵じゃん!」
改めて話すと、本当に夢物語のような救われ方をしたと思う。
聞いている春菜も目を輝かせていた。
「ちょっと惹かれてしまっている自分もいて。京介を忘れるために協力してくれただけだったのに」
「いいじゃんいいじゃん!だってもう良い人って分かってるわけだし!」
ノリノリの春菜に、少し言いづらくなってしまった悩みを打ち明けるため、私はぐびっと残っていたお酒を口にした。
「それがね、他にも女性がいそうなの」
そう思った流れや、はっきりとできていない彼との関係。
そのあたりを話した途端、春菜の顔色が変わる。
「……それはだめだ」
そして、春菜はグラスを置いて、身を乗り出した。
「まじで、ほんっっと茉莉って男見る目ない!!」
さ、さっきまで一緒になってキャーキャーしてたじゃない。
という言葉は、イライラを露わにする春菜には口にはしないでおく。
「絶対クズ男!ていうか沼男!私の前、連れてきなさいよ。全部吐かせてやるから!」
あまりの勢いに、私の方が笑ってしまうくらいだった。
しばらく沼男という概念への不平不満を聞き続け、ふぅと一息ついた春菜にお冷を渡す。
春菜はお冷を二口ほど飲んだあと、しっかりとした瞳でこちらを見つめた。
「でもね、本当にその人はだめ。一人を大切にできない人と一緒にいたって、絶対幸せになれないよ」
静かだけど、強い声に私はぎゅっと手を握りしめる。
「そんなのどんな理由があったって、信用できないじゃん。私は、茉莉に幸せになってほしいの」
春菜の優しさはまっすぐ、私の胸へと届いていた。
_/_/_/_/_/_/
帰り際、駅に向かって歩く途中、春菜は不動産屋の前で立ち止まった。
「とりあえず引っ越そうよ!私のマンションの近く来なって!この辺、住みやすいし」
そう言いながら、外に貼ってあった賃貸のビラを、次々と引き抜いて私に渡してくる。
「ちょ、そんなに……!」
笑いながら受け取ったけれど、ペラペラなはずの紙の束は、思ったより重く、手のひらにのしかかっていた。
_/_/_/_/_/_/
帰宅して、リビングのソファへと腰を下ろす。
柊真さんはお風呂に入っているようで、室内は静まり返っていた。
私は、くしゃっと握りしめられていた数枚のビラを、そっと広げた。
家賃、間取り、駅からの距離。
一人暮らしには魅力的な条件が並んだいくつかの賃貸は、今の私でも手が届きそうなものばかりだった。
京介と別れたすぐとは違う。
仕事にも余裕があるし、彼を思ってボロボロになることもなくなった。
もう、引っ越しをせず止まる理由なんて何も無いのに。
こんなにも後ろ髪を引かれる思いになるのは、やっぱり私が柊真さんと一緒にいたいと思ってしまっているからなんだろう。
『本当に、茉莉は男を見る目がない!』
反芻する春菜の言葉には苦笑いしか浮かばない。
そのバカさで、彼女の結婚式を祝えなかったかもしれないと思ったら、本当に、悲しい気持ちになった。
——確かに。
京介のときだって、みんなに反対されていたのに何ひとつ聞かなかった。
その結果が、ああなんだもん。
だったら今回は、春菜の言うことを、信じるべきなんだ。
家を選ぼうと、一枚一枚重ならないように並べてみる。
だけどどうにも現実味がわかなくて、私はぼんやりと全体を眺めるだけだった。
_/_/_/_/_/_/
第18話、読んでいただきありがとうございます_(⑉• •⑉_)
気に入っていただけたら、お気に入りやエールをいただけますと励みになります!
次回もぜひよろしくお願いいたします。
季節は夏になり、数少ない段ボールの中からは既に夏服が取り出されている。
柊真さんは相変わらず優しくて、甘い。
いつも気遣ってくれるし、そばにいると安心もする。
それなのに、あの日感じた違和感は、心の奥にずっと残り続けていた。
知りたい。
でも、踏み込めない。
堂々巡りが続く中、私は一人、ベッドでスマホを眺めていた。
……こういうとき、相談できる友達がいたらいいのに。
ふと、学生時代の親友である春菜を思い出した。
春菜は、小学校から大学までが一緒という唯一の存在でなんでも相談し合っていた過去がある。
彼女が関西に就職したあと、会う機会は減っていたけれど、たしかSNSで関東転勤になったと言っていたような……?
それも、もう一年以上前の話だから、今はどうなっているか分からないけれど。
連絡してみようかな。
連絡先から春菜の名前を探して、画面を開く。
スクロールして目に入った過去のやり取りに、私は苦笑いをこぼした。
<今度サークルの集まりあるよ!>
<久しぶりにご飯行かない?>
<この日どう?>
定期的に関東に帰省したタイミングに春菜は私を誘ってくれていた。
けれど、それに対して並ぶ、私の返信はひどいものだった。
<ごめん、今忙しくて>
<彼氏が帰ってくるからまた今度ね>
<今回はやめとく>
断り続けて、そのうち誘われなくなって、気づけばやり取りは途切れていた。
そんな現状を確認した手前少し迷ったけれど、断り続けた謝罪をしたい気持ちも湧いてきて、私は思い切ってメッセージを送った。
<久しぶり。今も関東にいるの?いたら久しぶりにご飯行かない?>
……会ってくれないかもな。
最後のメッセージは、二年前。
その履歴に、自己嫌悪とともに不安が大きくなる。
だけど、数分後に返ってきた言葉は思ったよりずっと明るかった。
<え、久しぶり!今、関東にいるよ!会おうよ!>
画面を見た瞬間、思わず、小さく息を吐いた。
トントン拍子で話は進んで、金曜日の仕事終わりに、飲みに行くことになった。
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待ち合わせたのは、駅から少し歩いたところにあるおしゃれなバルだった。
木目調のカウンターに、ほどよく賑やかな店内が可愛らしい。
先にメニューを開きながら手を振ってきた女性を見つけて、思わず足が止まった。
ショートカットに、ゆるくかかったパーマ。
元気な笑顔は学生の頃から変わらずハツラツとしていて、すぐに春菜だと気がつく。
「茉莉!」
久しぶりすぎる再会なのに、その声と笑顔だけで、一気に学生時代に引き戻された。
「春菜~~久しぶり!」
「久しぶり!とりあえず食べよ食べよ!何飲む?」
世話焼きで率先して動く腰の軽さも変わらない。
届いたドリンクで乾杯をして少し話しただけで2年の空白は消え去り、空気はすぐに当時のままに戻っていった。
「……卒業してからもたくさん誘ってくれてたのに、全然行けなくてごめんね。この間連絡した時にトーク遡ってたら、自分最低すぎて引いた」
私は、反省の色を出し背筋を伸ばしたけれど、春菜は対照的にケラケラと笑っている。
「いやいや、だって茉莉、彼氏いたじゃん。ほんと、尽くしすぎるとこ、昔から変わってないな~って思ってたよ」
思いも寄らない言葉が出てきて、私は目を丸くする。
「え、彼氏……そうだっけ?」
「そうだよ!自覚ないのも変わってない!茉莉って、彼氏がいるタイミング、ほんっとに友達と遊べなくなるの!連絡つかないし、こっちも逆に誘うの申し訳なくなっちゃうんだよねえ」
姉御肌な性格もあってか、まっすぐ飾り気のない言葉は懐かしかった。
ズタボロに言われているはずなのに清々しいくらいの直球さに、私は苦笑いするしかない。
「友達蔑ろにするのは違うよね、直さないと……」
そう自分自身にため息をつきながら、現状を振り返ってみる。
少し前までの京介のことや、今の柊真さんとの関係を思い返すと、正直思い当たる節しかなくて、言葉が出なかった。
「……で?」
グラスを傾けながら、春菜がにやっと笑う。
「飲みに誘ってきたってことは、フリーなんだ?」
楽しそうな彼女に、私はまた背筋を正して、わざとらしく一礼する。
「……京介とは、別れました」
「あーーー!懐かし!京介って、三年前くらいから付き合ってた人だよね?」
大きな声で言われて、思わず吹き出しそうになる。
京介とまだ仲良く順調だった頃は、低頻度ではあったけれど、まだ春菜たちとの集まりにも参加していた。
春菜は当時の私の話を覚えていたようだった。
「わー!よかった!あの人なんとなくモラハラ気質なところ感じてたし、みんなで心配してたんだから!」
……モラハラ。
胸の奥がちくりとする言葉をきっかけに思い出す。
彼との時間を作りたいがあまり、友達との時間を全キャンセルし始めた私に、確か春菜たちは全力で「それはおかしい」と伝えてくれていた。
だけど、私は何ひとつ、聞く耳を持たなかったのだ。
「ほんっと周り見えてなかったんだね、反省」
ぐびっとビールを飲むと、春菜はあっけらかんと笑った。
「それが茉莉のいいところでもあるけどね。でも、良い人に出会わないと最悪」
「はい。身に染みております」
そんな過去の恋愛の話から、仕事の話、学生時代のどうでもいい話まで、会えなかった二年間の話は途切れることなく盛り上がり、お酒も食事もどんどん進んでいった。
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ふたりともほんのりと酔いが回ってきた頃、春菜が少し照れたように口を開いた。
「私、ちょっと前に婚約したんだよね」
「えっ……!」
私は驚きで席を立ちそうになった。
「声かけてもらえてよかったよ。結婚式断れたら流石に傷つくし、実は連絡するの迷ってた」
笑い話みたいに言われたけれど、胸がきゅうっと苦しくなる。
「春菜。ほんっとにおめでとう。私今、すっごく反省した。親友の結婚をお祝いできないなんて本当に最悪だよ、もうちゃんとする!」
「なら良かった。茉莉も、いい人捕まえなよ。京介のあとは何かあるの?」
そう言われて私は、ここ最近の話をした。
出会った日のことから、救われたこと、支えてもらったことをひとつひとつ話していく。
「なにそれ、超素敵じゃん!」
改めて話すと、本当に夢物語のような救われ方をしたと思う。
聞いている春菜も目を輝かせていた。
「ちょっと惹かれてしまっている自分もいて。京介を忘れるために協力してくれただけだったのに」
「いいじゃんいいじゃん!だってもう良い人って分かってるわけだし!」
ノリノリの春菜に、少し言いづらくなってしまった悩みを打ち明けるため、私はぐびっと残っていたお酒を口にした。
「それがね、他にも女性がいそうなの」
そう思った流れや、はっきりとできていない彼との関係。
そのあたりを話した途端、春菜の顔色が変わる。
「……それはだめだ」
そして、春菜はグラスを置いて、身を乗り出した。
「まじで、ほんっっと茉莉って男見る目ない!!」
さ、さっきまで一緒になってキャーキャーしてたじゃない。
という言葉は、イライラを露わにする春菜には口にはしないでおく。
「絶対クズ男!ていうか沼男!私の前、連れてきなさいよ。全部吐かせてやるから!」
あまりの勢いに、私の方が笑ってしまうくらいだった。
しばらく沼男という概念への不平不満を聞き続け、ふぅと一息ついた春菜にお冷を渡す。
春菜はお冷を二口ほど飲んだあと、しっかりとした瞳でこちらを見つめた。
「でもね、本当にその人はだめ。一人を大切にできない人と一緒にいたって、絶対幸せになれないよ」
静かだけど、強い声に私はぎゅっと手を握りしめる。
「そんなのどんな理由があったって、信用できないじゃん。私は、茉莉に幸せになってほしいの」
春菜の優しさはまっすぐ、私の胸へと届いていた。
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帰り際、駅に向かって歩く途中、春菜は不動産屋の前で立ち止まった。
「とりあえず引っ越そうよ!私のマンションの近く来なって!この辺、住みやすいし」
そう言いながら、外に貼ってあった賃貸のビラを、次々と引き抜いて私に渡してくる。
「ちょ、そんなに……!」
笑いながら受け取ったけれど、ペラペラなはずの紙の束は、思ったより重く、手のひらにのしかかっていた。
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帰宅して、リビングのソファへと腰を下ろす。
柊真さんはお風呂に入っているようで、室内は静まり返っていた。
私は、くしゃっと握りしめられていた数枚のビラを、そっと広げた。
家賃、間取り、駅からの距離。
一人暮らしには魅力的な条件が並んだいくつかの賃貸は、今の私でも手が届きそうなものばかりだった。
京介と別れたすぐとは違う。
仕事にも余裕があるし、彼を思ってボロボロになることもなくなった。
もう、引っ越しをせず止まる理由なんて何も無いのに。
こんなにも後ろ髪を引かれる思いになるのは、やっぱり私が柊真さんと一緒にいたいと思ってしまっているからなんだろう。
『本当に、茉莉は男を見る目がない!』
反芻する春菜の言葉には苦笑いしか浮かばない。
そのバカさで、彼女の結婚式を祝えなかったかもしれないと思ったら、本当に、悲しい気持ちになった。
——確かに。
京介のときだって、みんなに反対されていたのに何ひとつ聞かなかった。
その結果が、ああなんだもん。
だったら今回は、春菜の言うことを、信じるべきなんだ。
家を選ぼうと、一枚一枚重ならないように並べてみる。
だけどどうにも現実味がわかなくて、私はぼんやりと全体を眺めるだけだった。
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第18話、読んでいただきありがとうございます_(⑉• •⑉_)
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