フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛

春咲さゆ

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第三章 一番星の光

第31話 優しすぎること

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「柊真さん」

 心なしか顔色の悪い彼を、ぎゅっと強く抱きしめる。

「素敵なことだと思うんです」

 彼の肩に顎を乗せてそう呟くと、彼は驚いたように顔を上げた。

 私はそっと腕を離し、ソファに正座する形で彼と向き合う。

「誰にでも優しい柊真さんだからこそ、私は助けられたんです。そんな柊真さんを尊敬してます」

 柊真さんは、ぽかんとしたまま固まって私を見つめていた。
 その表情があまりにも彼らしくなくて、場違いだと分かっていながら、思わず笑ってしまう。

「……本当ですか? 私と一緒にいたいって、思ってくれたんですか。私、ここにいていいんですか?」

 笑顔を保ったまま尋ねると、彼は戸惑ったまま、こくこくと何度も頷いた。

「ああ……うん。それは本当だ。さっき、そのお友達との電話で『家を決める』って言ってるのが聞こえて……慌てて。そうだ。電話、遮っちゃってごめん」

 いつもより少し弱々しくて、どこか可愛らしいその姿に、私は気持ちを抑えきれなくなっていた。

「好きです。私も」

 そう告げると、彼は数秒間、完全に固まってから、改めてこちらを向く。

「いや、待って……俺は、茉莉を傷つけるかもしれないって話を——」

 話を戻そうとする彼に私は少しムッとした。

「……じゃあ、それなら止めるって言ってほしかったんですか?」

 気持ちをそのまま、小さな声に乗せる。
 柊真さんは驚いたように目を瞬かせ、言葉を探していた。

「傷つきません」

 私は、はっきりと続ける。

「柊真さんの分け隔てない優しさ、本当に魅力的だと思っています。見ていて不快になることなんてありません。……私が、実際に助けられてきましたから」

 言い切る前に、彼の腕が私を引き寄せた。

「……本当に?」

 耳元で囁かれたその声に、私は迷いなく頷く。

「もちろんです」

 抱きしめ返すと、彼の温もりが胸いっぱいに広がった。

「こんなに素敵な優しさを持つ柊真さんに、『一緒にいたい』って言ってもらえるだけで……それだけで、十分特別だって思えます」

 彼は少し息を吸ってから、まっすぐに言葉をくれた。

「誰よりも大切に思ってる。それだけは、ずっと伝えることを約束する。茉莉が不安にならないように、傷つく結果にならないように、ちゃんと考える。だから、不安になったときは言ってほしい。気づけないことがあったら、何度でも伝えてほしい」

 そんなまっすぐな言葉を向けられて、これ以上、私に何を求めろと言うのだろう。

「幸せです。柊真さんは、出会った日から私のヒーローです」

 彼の大きな手のひらが、そっと肩に触れる。
 少し距離ができた私たちは、静かに見つめ合った。

「いいのかな、本当に……」

 不安そうに、でも初めて浮かべた小さな笑顔。
 その表情に、なぜかこちらの胸のほうがぎゅっと締めつけられる。

 そっと頬に触れる指先が、くすぐったくて、あたたかい。
 思わず目を細めたその瞬間、ふいに唇に柔らかな感触が落ちてきた。

「……っ」

 驚いて目を開くと、すぐ目の前に、少しだけ照れたような柊真さんの顔があった。

 見慣れないその顔に、私は思わず首に腕を回す。

「気付いてますか?……柊真さんからしてくれたの、初めてです」

 そう言って、目を見つめると、彼はまた照れたように口元を緩めた。

「……確かに。不思議だな」

 そう呟きながら、そっと私の肩に手をかける。

 次の瞬間、ふわりと視界が傾いて、私はソファに押し倒されていた。

 上から覗き込む彼の表情は、いつもの落ち着いた顔とは違って、どこか熱を持っていた。

「ずっと、こうしたかったのかもしれない。誰かを忘れさせるためじゃなく、俺の意志で」

 低く、照れ混じりの声に、胸にピリリと刺激的な熱が加わった。

「ずっと隣にいてほしい」

 その言葉を、今度はすぐ近くで聞きながら、私は彼のシャツをぎゅっと掴んだ。
 思わず泣きそうになりながら、それでも笑ってしまう。

 ——こんなふうに、誰かの腕の中で、自分の居場所を見つけたのは、久しぶりだった。


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第31話、読んでいただきありがとうございます_(⑉• •⑉_)
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次回もぜひよろしくお願いいたします。
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