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初めてのお出かけ ⑤
しおりを挟む「ついたよ。覚えて……ないよね。」
フロリアン様が連れてきてくれたのは、賑わう公園を少し過ぎた場所にある、木々の中の小さなテラスだった。
鳥かごのように、白い柵で覆われている。天井にはガラスがはられていて、中にはちょうど2人用の白いテーブルとイスが置かれていた。
柵を撫でながら、フロリアン様が優しい顔で話し始めた。
「2人でよくここに来てさ、いろんな話をしたんだ。ほら、ここなら人目も気にならないし。」
「そ、そうだったんですね…。すみません…私、何も……」
「あぁいや、謝らないで。思い出してもらうために連れてきたんじゃない。ただ、ゆっくりできる場所はやっぱりここしかないと思ったから。」
「……ここ、完全に2人用ですよね?おれたち3人ですけど。」
「うん。今日デートに誘ったのは僕なんだし、君は命令で着いてきただけなんだから譲ってくれるよね?」
「…………はぁ……。まぁ、おじょーさまがそれでいいなら。ていってもすぐ近くで待機してますからね。ちびっこ公子さまにもっとちびっこおじょーさまの2人なんて、一瞬で攫われるかもしれないし。」
「はは、たしかに体は戻ってしまったからね。危なくなったら頼むよ、少年騎士様。」
「おれは青年だっての…まぁいいや。じゃあごゆっくり。」
フロリアン様にエスコートされて中に入る。
ガラス越しの空はもっとキラキラ輝いていて眩しい。思わず目を細めると、フロリアン様は大きな傘を取り出してテーブル中央の穴に差し込んだ。
「パラソルっていうんだよ。」
不思議そうに見つめる私に教えてくれた。テーブルが支える傘なんてすごいわ。手が疲れないのね。
「さ、座って。」
「ありがとうございます…。」
私の向かいにフロリアン様が座る。
こうしてちゃんと向き合ってお話しするのは初めてだわ。
「……あまり時間もないし、早速なんだけど…。リア、聞きたいことはある?僕が答えられることはちゃんと答えるよ。」
フロリアン様は優しくも真剣にそう言った。
きっと私がまだ混乱していることを分かってて気遣ってくれたのね。
「あの、では…。私は、フロリアン様にとってどんな……いえ、ちゃんとした婚約者…でしたか?」
「なんだ、そんなことで不安にならないで。僕はね、ずっとずっと君のことが大事で……大好きだったよ。君はとても…いや、君自身のことは言わないでおこうか。これからの君はきっと変わるだろうから。」
「そう、でしたか…。あ、あの、じゃあ私はフロリアン様のことをどう…」
「…ふふ。そうだね。……前の君は、僕に好きだと言ってくれていた。でも、今の君はそんなこと気にしないでね。僕は何度こうなっても君を好きになってしまうだろうし、その度に君に好きになってもらえるように頑張るから。だからリアは笑っていればいい。……あ、でも嫌いじゃない限りは避けないでもらえると嬉しいかな。」
……私には、フロリアン様を好きになる未来があったんだ。突拍子もないことだけれど、どこか納得してしまう自分もいる。いまの私は…まだ出会ったばかりのフロリアン様に特別な感情はない。でも、いつかまた……目の前の綺麗なこの人に、恋をするんだろうか。
「……もうひとつ、いいですか?」
「もちろん。どうぞ。」
「どうして……時間が、戻ったんですか?私だけ記憶がないのにも理由があるんでしょうか…」
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